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「面白いと思えば やりなさい!!」
気ままカフェAnomura
中村 克史 代表
- 2014/8/19
大河原
本日は、よろしくお願い致します。
中村様は工業高校から愛知県の自動車整備の専門学校に進まれたそうですが、
そこからどのようにしてドッグカフェを経営するに至ったのでしょうか。
中村
そこから話すとかなり長くなるのですが(笑)
僕は子供のときから自動車が好きで、将来メカニックになるためというよりは、純粋に車のことをもっと知りたいと思い入学しました。
しかしそこで自動車のセールスについての講義を聞いたときに、仕事として車に関わるなら売る側に立つ方が面白そうだと思い、営業マンになることを決めました。
卒業後は、三島川之江の自動車ディーラーで10年勤めていましたが、私自身いろいろなことをやりたいと思っていたので、営業の中でもセールスではなく企画の部署に社内転属をしました。
それまでは直接売る側だったのが、今度はイベントや広告など、売るための仕掛けを作る側になったのです。
そこでも3~4年ほど色々と経験をさせていただきました。
最終的に私が独立するきっかけを作ってくれたのも実はその会社で、「社内起業制度」というものがありまして。
大河原
近頃増えてきていますね。
中村
20年ぐらい前になりますが、私もそれに応募しました。
全部で7件の応募があったのですが、私1人が選ばれました。
その時に企画していたのが、「木のおもちゃ」です。
大河原
積み木とかそういうのでしょうか。
中村
積み木も含めて、天然の木でできたおもちゃの専門店をやりたいと思っていました。
車と木のおもちゃがどう結びつくかというと、私がいた自動車ディーラーはファミリーカーを売っていたので、子供が来たくなる代理店になったら必然的に親も来るのではないかと考えたからです。
また私自身も木のおもちゃには興味があり、当時は木のおもちゃ専門店が愛媛にはなかったということもあって、愛媛初のお店を作る企画を提出したのです。
結局それは出来なかったのですが、私にとってその取り組みは、社内起業とはいえ企画書を作成したり損益を考えることをすごく勉強させていただける機会になりました。
しかしそれ以来、自分で何かしたいと強く思うようになりまして、10年間勤めた自動車ディーラーを退職しました。
といってもすぐに独立したわけではなく、転職をし続けました。その中で導き出された答えは、「どの会社に行っても嫌になる部分は全く変わらない」と言うことでした。
業種についても職種についても、自分が抱える問題は全く変わらないのです。
大河原
なるほど、わかる気がします。
中村
そうなると独立しかないわけですが、具体的に何をするかは決まっていませんでした。
しかしひとつだけ決めていたことがありまして、それはたこ焼きやクレープのような、「移動販売」をすることだったのです。
その理由は、また社内起業に戻りますが、企画の初期段階では木のおもちゃ屋はショールームの中に作る予定でした。
そこからおもちゃの販売、レンタル、中古おもちゃの買取、イベントなどを諸々考えて、最終的に「ワゴン車におもちゃを積んで、サーカスのように街々を尋ねて回るおもちゃ屋さん」というイメージが面白そうだと考えました。
移動販売はたこ焼きなど、物を販売するのが一般的ですが、「東京に移動しながらドッグシャンプーをするサービスがある」という話を聞きました。
それを始めた方はオーストラリアで同じようなサービスが普及しているのを見て、「日本にあったら面白いのではないか」と思い、身内で試してみたところ好評だったのでビジネスとして始めたのだそうです。
その話を聞いて、日本でもこういうサービスは求められているサービスなのではないかと思いました。ペットショップやペットサロンに連れて行って洗ってもらうサービスは既にありましたが、お店の方から来てくれる形態はなかったと思います。
その人は、「これをやったら儲かる」と思ったのではなく、「求められているサービスなんだ」と思って始められたのです。
私にとっても、「移動販売でサービスを売る」という発想はすごく新鮮で、かつ世の中に求められているサービスだったので、目から鱗でした。
話を聞いた翌々日ぐらいに東京に行って、その方に愛媛で同じサービスをしたい旨を伝えて、やり方を学びました。
その出張ドッグシャンプーは7年間続けたのですが、今は違う方にお譲りしています。
私は色々やりたい人なので(笑)
ドッグシャンプーの他に、犬専門のイベントも始めましたが、こちらは長続きしませんでした。
大河原
イベントですか。
中村
飼い犬にも楽しみを提供してやりたいと思いまして。
これも関東で既にされていた方がいらっしゃいました。
ところが、松山の人は飼い犬に対する考え方、お金の掛け方が関東と全く違ったのですね。
これはドッグシャンプーをしているときも思っていたのですが、関東ではドッグシャンプーが開業してから3ヶ月の時点で月に100頭の来店というのがひとつの目安でした。
大河原
採算ライン、ということですね。
中村
そうです。
関東では3ヶ月で達成できるのですが、松山で私が月に100頭洗えるようになるまで3年掛かりました。
ほとんど無一文から始めたので、宣伝力の差もあったのかもしれません。
しかし四国で初めてのビジネスで、テレビや雑誌でも取り上げてくださったので、自分から宣伝しなくても徐々に話が広まって3年掛かって、やっと月100頭を達成でき、安定するようになりました。
松山で犬を飼っている方の中でも、「洗ってあげたい」と考える方はいらっしゃいまして、大型犬や雑種犬を外で飼っている方、小型犬でも室内で3匹以上飼っている方など、要するにペットショップやペットサロンに連れて行きにくい方たちが必然的にメインのお客様になっていきました。
また、小型犬や室内犬だと、カットの必要があるのですが、私のサービスはシャンプーだけだったのでそれはできませんでした。
ただ、大型犬や雑種犬になるとカットの必要がなく、シャンプーだけで十分満足していただけるので、上手くペットサロンなどと棲み分けが出来た、といったところでしょうね。
それはやってみて初めてわかったことです。
ニーズを狙っていったのではなく、結果的に眠っていた需要を掘り起こせたのです。
犬専門のイベントが失敗をしたのは、結局そこにニーズが無かったからなのだと思います。それからはまたドッグシャンプーに専念していました。
さて、このドッグカフェの建物自体も実は6年位前からあったもので、それこそ愛媛県では初めてのものだと思います。
ここに本格的なドッグラン付きのドッグカフェができると言う情報を聞いて、オープン一週間前に当時のオーナーさんにご挨拶して、それ以来お付き合いをしておりました。
私自身はドッグシャンプーの仕事を続けるつもりだったのですが、ドッグカフェのオーナーさんから突然、「この店をやってみる気はないか」と言われました。
僕は元々移動販売だけを続けるつもりでしたし、飲食業もするつもりはなかったので、最初は遠慮していました。
ところが、ケーブルテレビで「イヌガク」という番組の企画が立ち上がり、このお店を撮影場所として使えるなと思いました。
また、ドッグシャンプーをしていたときに、日曜日だけ移動雑貨屋をしていたのですが、店舗の中に雑貨を置けば、もっと力を入れられるなと思いました。
要するに、ここの環境、設備が面白いことに使えそうだと考えた結果、「全部まとめてここで出来るようにしたらいいのではないか」と思い、一昨年の11月に私がオーナーとして新規開店に至ったのです。
これが今までの経緯です。長かったですね(笑)
大河原
楽しい人生を送ってこられていますね。
ここまで話してくださった経営者の方は初めてです(笑)
中村
私は喋るのが好きなので、喋らせたらずっと続きますよ。
これでもまだ端折っていますからね。
社内起業でおもちゃ屋を考えたときも、移動シャンプーを始めたときも、ここのことも、本当は一つ一つにもっと色々な思いがあるのです。
大河原
有難うございます。
そのように何かを始め、継続するために、中村様が努力したり、心掛けたりしていることはございますか。
中村
その前に、目標を決めてそれに向かって頑張っている人や、「努力は報われる」という言葉を否定するつもりはないのですが、自分から「頑張っている」「努力している」と言う人は全然努力していないと思います。
本当に努力している人は、自分自身で努力していることがわからないと思います。
やりたいことを目指しているので、わざわざ自分で自分を「頑張っている」と言おうと思わないものだと思います。
大河原
自分から「努力している」と言う人は「努力している自分が好き」ということでしょうか。
中村
そうですね。
恋愛でもよくある、好きな人がいるのではなくて、「恋に恋する」に似たことでしょう。
勿論中には本当に努力している人もいるかもしれませんが、「これに向かって努力している」と言っている自覚がある時点で、実は本物の努力ではないのだと思います。
心がけていることといえば、人生楽しいこともあれば嫌なこともありますが、「流れに身を任せる」ことにしています。
大河原
「流れに身を任せる」ですか。
中村
はい。
しかしそれは、逃げたり、楽をすることではありません。
非常に辛いときでも無理せず、もがかずに、「そういう時期なんだ」と自分の中で受け止め、逃げないことが必要です。
そうすると、ふと光が見えたり、何かのきっかけに出会う時が来るのです。
私はそうすることによって、落ち込んだときは落ち込んだときなりの、いろいろな経験やエピソードを得てきました。
大河原
その後の人生に、より深みが出そうですね。
中村
そうですね。
言わば、いいことも悪いことも経験として自分の中に落とし込むということです。
自分の思うままにやってみる生き方をしたら、楽しく生きられるのでしょうが、普通の人だったら色々なしがらみがあります。
もちろん、家族や家庭を守ることに生き甲斐を感じている人もいます。それは凄く素晴らしいことです。
ストレスフリーにするためには、敢えて頑張らない方が時には、いいんじゃないかということです。
大河原
逆境では開き直ることも大切なのですね。
中村
それから、努力をする上で大事なのは、「力を入れるところを間違えないようにする」ことです。
いくら好きなことでも、それに対して十何年もの努力を重ねても成果が出なかったら、それは「無駄」になってしまいます。
たとえ実らなくても自分で納得できる結果ならいいですが、もし別のところに才能があって、そちらは5年ぐらいの努力で大成できたとすれば実に惜しいことです。
そうならないようにはどうすればいいかと言うと、「アンテナを張って、自分が気になったことにはとりあえず手をつけ」ましょう。
よく、これをしようかするまいかと迷うときがあると思いますが、しなかったための後悔は後々まで残りますが、した上での後悔はこれもまた経験に繋がります。
私自身は今までいろいろなことをしていますが、実はまだ「これだけは人に負けない」というものを見つけてはいません。
ただ、色々なことをしていくことで、努力の向き先はわかってくると思います。
大河原
とにかくトライアンドエラーと言うことですね。
中村
その通りです。
今の若者は公務員など安定した仕事を求めすぎる傾向があると思いますね。
しかし安定を求めて入社すると、その組織の中にい続けるためのストレスは重くなます。
それでもなお安定を求めるのか、自分から何かを興すかということです。
ただし自分自身で明確な気付きがなく、単にやりたいと思うだけでは起業できませんし、もし気付きがあるのだったら、実行せずに後悔するよりも実行に移した方がいいと思います。
大河原
それは解ってはいても相当な勇気が要ることではないでしょうか。
中村
もちろんリスクは大きいですよ。
それから人目を気にして、自分を抑えてしまう人もいますね。
しかし、独立して起業などを考えた時に、そういったしがらみ的なことから抜け出せない内は、本気ではないのかもしれませんね。
大河原
吹っ切れられるかどうかですね。
中村
吹っ切れるという意識すらないと思います。
本当にそれをしたいと思って突き進み始めたら、周りの環境がどうだろうとやっていけますから。
大河原
有難うございました。
「とにかく面白いことをやりたい」とフェイスブックに書いていましたが、そういうことを考えられた理由は何でしょうか。
中村
人間いつ事故や事件に巻き込まれて死ぬかわからないので、私はいきなり殺されたとしても「あー、あれやり残した…」と思わないように、1つでも面白いことをしておきたいと思ったのです。
今日このインタビューを受けた理由も、インタビューされるのを自分が面白いと思うから答えているというのもありますから。
全てはそこです。
大河原
常に全力で面白いことをするということでしょうか。
中村
その通りです。
無理矢理面白いと思い込むのではなく、本当に面白そうだと思ったからしているのです。
大河原
面白いと思ったから面白いことをする、ということですが、面白い・面白くないの基準は何でしょうか。
中村
やはりそこは知りたいですよね。
感覚的なことなので具体的に何を以ってとは言いにくいのですが、要するに、損得勘定なしにやりたいと思うことですね。
例えばさっきも言ったケーブルテレビの番組は、ノーギャラな上にカフェを閉めて収録をするのでその日の売上げにはならず、時間的にも拘束されますが、それでもしたいからしています。
それを仕事にできると、「天職」となるのでしょう。
私の持論ですが、天職の見極め方として、「一生遊んで暮らせるお金が入っても、今の仕事をやりたいと思うか否か」だと思います。
大河原
有難うございます。
それにしても、そういう生き方だと普通は周りの方から愛想を尽かされると思うのですが。
中村
そこは個々人のキャラクターの問題で、確かにそのような生き方が出来る人と出来ない人はいるかもしれません。
自分で言うのもなんですが、私の場合は「あー、中村さんそういう人だからなー」となっていて、逆にそういうことをしないと私らしくなくなってしまっています。
大河原
今の中村様というキャラクターができるきっかけというのはあったのでしょうか。
中村
私も会社員のときは、会社という組織の中にいることに慣れていたので、自分が独立して仕事をするなんて考えられませんでした。
社内起業で木のおもちゃの専門店の企画を作るときに、徳島で同じく木のおもちゃの専門店をしていらっしゃる方から「これなら独立して十分出来るレベルだ」と言われたのに、当時は独立なんてとても無理だと思っていました。
それが、井の中の蛙といいますか、一歩企業から出てみると、大変な部分はありますが、「意外と何とかなるものだ」と思いました。
大河原
実際に独立して初めて、このようなキャラクター、生き方でもいいんだと感じられたのですね。
中村
ただそれは独立して何年も経った今だから言えることなのでしょうね。
リスクを回避する方法はその徳島の方など先駆者に話を聞けば解りますが、自分で実際に体験してみないと、どのくらい痛いか、熱いかわからないし、痛さや熱さを他人に語ることは出来ないわけですから。
それに、敢えて飛び込んでみることで、ひょっとしたら成功のためのヒントが見付かるかもしれませんよね。
先程も言った、「せずに後悔するよりもして後悔」にも繋がってくる話です。
大河原
有難うございます。
今後はどのような「面白いこと」に取り組みたいとお考えでしょうか。
中村
今後の取り組みと言うか、私個人の目指すところとしては、「こういう風に自由に生きられたらいいな」と思われるようになりたいですね。
大河原
羨ましがられたいということでしょうか。
中村
そうですね、生き方というか、生き様を羨ましがられたいです。
カフェの名前にもありますが、気ままに生きたい、傍から見たら「あの人あんな自由にして、どうやって生活できてるんだ」という人になりたいのです。
大河原
有難うございました。
最後に、若者に向けたメッセージを頂きたいのですが。
中村
たくさん、お話をさせて頂きましたが、「色んな経験をする」「やって後悔する」「流れに身を任せる」「自分の才能に気付く」「気付いたところに努力する」これだけやれば、成功はしなくても楽しくは生きられますよ。
大河原
なるほど、人生はどれだけ楽しめるかも大事ですからね。
まだまだ聞き足りないところもありますが、本日は貴重なお話をお聞かせ頂き、有難うございました。
今度はインタビュアーではなく、お客さんとして訪れてみたいと思います。
インタビュアーより
中村様のお店にお伺いした日は土砂降りでしたが、それでも外の天気を気にさせないほど面白く、興味深いお話を聞かせていただきました。
中村様は、これまでに出会った経営者の方と違い、「面白いこと・自分がしたいことをする」という気持ちが強く前に出ている方でした。
しかし、一見出鱈目で楽天的な生き方に見えても、逆境にあるときはそれを味わい、自分の経験として取り込んでしまう前向きさは私も見習いたいと思います。
行動原理ともいえる「とにかく面白いことをやりたい」の言葉の根底にある、中村様の逞しさを感じられるインタビューでした。
大河原 慧
乞うご期待!
会社概要
社名:気ままカフェAnomura
代表名:中村 克史
住所:愛媛県伊予郡砥部町川井1165-2
TEL:089-962-6006
事業内容:・宿泊業/飲食業