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「もっと愛媛県をアピール」
有限会社 福助珍味 / petit cerise et HIME
内藤 成博 代表取締役
- 2014/9/13
大河原
本日はよろしくお願いいたします。
内藤代表のように、お父様の事業とは関係なく、起業をして会社を経営されている方のインタビューは初めてです。
会社の方はお父様が創業なさったものを受け継いだということですが、内藤代表が料理人を志されたのはなぜだったのでしょうか。
内藤
父が創業した会社が珍味食品の卸売をしていることもあって、料理をすることには元々興味がありました。
高校時代は将来に備えて経営を勉強しようかと思い、大学の受験勉強をしていたのですが、受験勉強をしながら夜食を作ったりすることが楽しくて、会社を継ぐ前に職人を目指そうかと考え、大学ではなく大阪の調理師専門学校に入学しました。
それが19歳の時です。
大河原
本当に料理が好きだったのですね。
会社を継がないことについて、両親からの反対は無かったのでしょうか。
内藤
いいえ、特にそういうことは無く自由にさせてもらいました。
私は一人っ子なので、将来的には会社を継ぐことは当然だと考えていましたが、当時は父が健在だったのと、実のところ食品の卸売業にあまり魅力を感じていませんでした。
また、一度継いでしまったらその仕事に縛られるので、一度社会に出ようと思いました。
大河原
家を継ぐ前に、 自分のしたいことをしてみようと決められたのですね。
内藤
その通りです。
大河原
有難うございます。
専門学校を卒業されてからは、どのようなところで働かれていたのでしょうか。
内藤
まず、松山の全日空ホテルでシェフとして3年くらい修行をしました。
その後は大阪のレストランで、職人としての腕を磨きながら、ホールスタッフも兼任していたので、接客や売上げに関することも学びました。
大河原
そのように大阪や松山でシェフとして勤められるうちに、自分なりのお店のビジョンが出来上がってきたのですね。
内藤
そうですね。
まず、愛媛県にはすごくいい食材があるのに、今一つ注目されていないことがあります。
次に松山は観光地ですが、道後や中心街には居酒屋が多く、反面フランス料理は注目されていません。
東京や大阪にはフランス料理の名店がたくさんあり、私もよく食べに行きましたが、料理の腕が同じなら地元でいい食材を使ったほうが美味しくなります。
それなのに地元で地元食材を使ったフランス料理店が少ないので、松山の人や観光客にももっと知って頂きたいと思いました。
松山は日本だけでなく海外からも観光客が来ているはずなのに、おもてなしの料理が和食ばかりなのは少し残念だなと感じます。
もっと他の形で、愛媛の食材の魅力を引き出せる料理を作りたいと思っています。
大河原
確かにお店では伊予牛や地鶏など、地元の食材を使った料理を提供されていますね。
内藤
はい。
地元の食材をメインに使っています。
素材の味を活かす和食だけでなく、職人が加えた一手間が注目されるフランス料理も、これからは評価されるのではないかと思います。
松山ではまだまだ苦労することも多いですが、料理やワインを楽しみに来てくださる常連の方もいらっしゃいますので励みになり頑張っていけます。
大河原
有難うございます。
愛媛の食材に新たな可能性に光があたってほしいです。
そのように自分のお店のビジョンを持ち、料理人として修行する傍ら、ご実家の会社を継がれたのは、どのような理由があったのでしょうか。
内藤
父が亡くなったのが会社を興して29年目で、それまでは父と母の2人で切り盛りしていました。
得意先から注文が来たらその食材を配達するという仕事でしたが、経営については母が支えていたことと、父が亡くなっても長男の私がいるということで、周囲からは信用されていたようです。
私も当時30歳を越えていたのですんなり代替わりが出来たのだと思いますが、理由としてはやはり19年間会社が継続していたことが一番大きかったでしょうね。
大河原
なるほど。
それでは、会社の経営は今まさに学ばれている途中なのですね。
内藤
そうですね。
父が亡くなってからは、私と母と従業員の方の3人で頑張って、年商1億近くまで行きましたが、経営というものはいつまで経っても学びの連続です。
会社を継いでもう10年経ちますが、人との交流があったからこそ続けられたのだと思います。
大河原
人との交流ですか。
内藤
色々な異業種交流会に参加していますが、他の経営者様のお話を聞いて学びを得ていった結果が、今まで会社を続けられたことではないかと思います。
大河原
そのような繋がりが出来るのは大事ですね。私も今、積極的に交流会等に参加させて頂いています。
3年前の平成23年に自分のお店を開かれたということですが、その時期に決心されたきっかけは何でしょうか。
内藤
ちょうど40歳になり、会社を継いでからそれまでのうちに会社も自分も信用や人脈ができたので、今が人生の旬だと思い、松山で挑戦してみようと考えオープンさせました。
当時は震災直後で、日本経済が落ち込んでいた時期なので、厳しいことは解っていましたが、一番いいときに始めるよりも、底の時期から始めたほうが伸びしろが大きいのではないかと思いましたし、前々から思い描いていた夢でもありましたから。
まだまだ大変ですが、これを乗り越えたときには、一回り大きくなれるのではないかと思います。
大河原
なるほど。私も将来、自分の「旬」が分かるように、力を付けていきたいです。
内藤代表のお話を聞くと、10年ごとに転機が訪れていますね。
内藤
そうですね。
思えば、10年間ぐらいのサイクルで違うことに取り組んでいるのかなと思います。
20代の時は、料理人になるための修行をしていました。
30代では父の会社を継いで、経営の勉強と人とのコミュニケーションの仕方を学びました。
大河原
これからの40代はなにをされるのでしょうか。
内藤
これからは、今の店ではもっと地域に根ざして基盤を作り、それを元に愛媛の食材や料理の技術を東京などにアピールしたいと思います。
地域密着もいいのですが、もっと先を目指していかなければいけませんね。
大河原
東京・大阪や海外からの集客も視野に入れているのですね。
内藤
そうですね。
あるいはこちらから東京に出ていくこともあるでしょう。
愛媛と東京の橋渡しをして、愛媛の食材の美味しさを都会に発信したいと思っております。
大河原
なるほど。
会社とお店で、経営上重視していることについて違いはあるのでしょうか。
内藤
会社の方は、今のところ父の経営方針を引き継いでいます。
当社の得意先は飲食店や仕出し料理屋さんで、料理に関して本職の方が相手になりますので、値段でも食材でも、より細かな知識が必要です。
一方、お店ではお客様に対して直接サービスをすることになるので、お店に来てくださるお客様がどういったものを好んでいるかなどを把握して、1人1人に合ったサービスをすることが大事です。
大河原
飲食店に卸すのがメインと言う点では、内藤代表も実際にお店を経営しているので、会社の得意先様のお気持ちもわかってくるのではないでしょうか。
内藤
そうですね。
「私のお店ではこの品物をこのように使ってお客様に喜ばれている」ということを言ったりはします。
ただ、本来和食用の食材で、フレンチとは分野が違うので、参考になるかどうかは中々解らないのですが。
洋食屋さんに、どのようにして使って頂けるかをアピールしていくことが課題であり、面白みでもあると思います。
大河原
洋食でも和食の食材が広く使われるようになれば、新たな需要が生まれて、会社も販路が広がりますね。
会社の方で取り扱っていらっしゃる食材は、そういったことも踏まえて、どのようなこだわりを持って選んでいらっしゃるのでしょうか。
内藤
昔は割烹材料が中心でしたが、今ではバイキングとか、ビアガーデンといった比較的安価な料理に使う食材も多く取り扱っているので、他社との価格競争が激しくなっています。
大河原
では、安くてもいい商品を選ぶことに特に気を使っているのですね。
内藤
そうですね。
仕出しの材料だと基本的に加工品を卸していかなければいけないのですが、今はそういったものは中々売れませんね。
今では食材というより原料の需要が高いですが、そうなると完全に価格の勝負なので出来るだけ質を落とさず、安く提供することが要求されます。
更に、珍味だけではなくて食品全般から雑品なども売って、得意先のお客様に貢献しています。
それが私の会社での仕事です。
大河原
有難うございます。
こちらのお店でのこだわりというと、先程おっしゃったように愛媛県の食材ということですが。
内藤
その通りです。
地元の食材をフランス料理に使うことで、新たな魅力を表現したいと思います。
大河原
お店で出す料理用の食材を見極める基準はどこにあるのでしょうか。
内藤
ランチは1,500~3,000円で設定しています。
イノブタなどの比較的安い肉、魚などを使うようにしています。
ディナーになると5,000~8,000円になるので、伊予牛やアワビなどの高級食材も色々と仕入れています。
常連のお客様にはお医者様などの方が多く、美食家の方に対して恥ずかしくない食材を選ぶようにしています。
大河原
美食家ですか。確かに、お医者様や会社社長の方だと舌が肥えていらっしゃるのだと思います。イメージですが(笑)
内藤
そうですね。
ワイン好きな方もいますしね。
大河原
会社とお店を経営する中で、それぞれの仕事がお互い影響しあうこともあるのでしょうか。
内藤
会社の得意先の社員さんがお店にお客様としていらっしゃってくださることもあります。
そのときにはお店で接待をしたりなど、柔軟に対応が出来ますよね。
また、そこで料理に対してヒントを頂いたり、逆にこちらからアドバイスをお出しすることもあります。
大河原
なるほど、お互い料理人ですからね。
内藤
と言っても私の会社は業務用食材を取り扱うということもあり、得意先は基本的に、旅館やホテル、仕出し料理屋さんが殆どです。
料理店さんとのお付き合いはほんの一部ですよ。
大河原
そのような違いもあるのですね。初めて知りました。
先程も少しお話がありましたが、会社のほうで扱っている商品を、こちらで料理にしてお出しすることもあるのでしょうか。
内藤
勿論ありますよ。
マリネなど、オードブル系の珍味も当社では扱っています。
それらをアレンジして、飲み放題メニューの料理にしたり、二次会用の料理にしたりします。
それから「ばちこ」という珍味をご存知ですか。
大河原
いいえ、初めて聞きました。
内藤
「くちこ」とも言いまして、ナマコの卵巣を塩漬けにして延ばして乾燥させたものです。
三味線のバチみたいな形をしているので「ばちこ」という名が付きました。
そういった珍味をマヨネーズと和えたりして、お酒のアテに出すこともあります。
マヨネーズは元々フランスのソースですから、そこでも日仏の融合ですね。
珍味を扱う会社とフランス料理店を両方していると、このようなオリジナル料理も作れるのですよ。
大河原
聞くだけで食べてみたくなりました。本当に可能性は尽きないですね。
ちなみに、世界三大珍味は別として、フランス料理にも日本のような「珍味」ってあるのでしょうか。
内藤
そういった珍味は無いこともないですが、日本で取り扱うとなると、現地から取り寄せることになってしまいます。
なので、専ら日本の珍味にオリジナルのアレンジを加えています。
大河原
有難うございます。
フランスの珍味もどんなものか興味があります。
今後は、会社については先代のお父様の方針を引き継ぎながらやっていくということでしょうか。
内藤
そうですね。
でも、もう10年経つので、徐々に私のやり方で、アレンジしながら、やっていきます。
父の代からのお客様もだいぶ少なくなっていますのでね。
大河原
どのようなアレンジを考えていらっしゃるのでしょうか。
会社の方でも内藤代表のビジョンがあればお伺いしたいのですが。
内藤
将来的には、珍味の卸だけでなく小売も始めたいですね。
今は業務用にキログラム単位で売っていて、中には一般的にあまり知られていない珍味も多いのです。
女性が好きそうな珍味もいっぱいありますからね。お酒の肴というイメージではなくて、女子会でも出せるものをこれから売り出したいと思います。
大河原
女性受けする珍味とは、どんな味なのか興味あります。
強みを活かして、新しいところでも発信し続けて欲しいと思います。
このお店については、今後どのように盛り立てていきたいのでしょうか。
内藤
お店としては少しずつ、ブライダルにも力を入れて行こうかと思います。
今、若い人達の間では結婚しても披露宴をしないことが多いでしょう。
そういう話を聞いて、お祝い事でもお金を使いたくないという時代になってきたと思います。
そこで私のお店は全部で40人ほど入れるので、ミニウエディングの会場にもしていきたいと思います。
ホテルや結婚式場の披露宴では大勢の列席者に料理を出す必要があるので、どうしても冷めてしまいます。
一方、小さい店にも小さい店なりの、美味しい料理の提供の仕方があるのではないでしょうか。
大河原
ホテルや結婚式場の料理にはない美味しさを召し上がって頂きたいのですね。
内藤
その通りです。
ホテルの料理が美味しくないというわけではありませんが、そこでは出せない美味しさ、そして小さい店ならではのサービスを提供していきたいと思います。
大河原
確かに。
規模が小さいとそれだけ隅々まで気配りが出来そうですね。
内藤
そうですね。
家にいるような感覚で使って頂けたらと思います。
大河原
有難うございます。
内藤代表ご自身の夢や目標というのはありますか。
内藤
私の地元でもある愛媛をもっと内外にアピールしていって、観光客に来て頂くだけでなく地元の方にも愛媛の食材の美味しさを分かって頂くことで、愛媛県に貢献したいと思っています。
お店の名前の”petit series et HIME”は「お姫様と小さなサクランボ」という意味ですが、そこにも「エヒメ」が入っていますから。
お店も開店から3年経って、ネットで見たという観光客の方も来てくれるようになってきましたから、少しずつ私の考えていることが実現しつつあるのではないかと感じています。
大河原
かわいく素敵なお店の名前ですね。
食を通じて愛媛県の魅力を広める試み、微力ながら私も応援させて頂きます。
最後に、これから社会に出て行こうとする若者に、メッセージをお願い致します。
内藤
東京や大阪、あるいは海外に行って自分を成長させるのもいいのですが、私の友達に、東京に出てもふるさと納税をしてくれている人がいます。
そのように、もっと愛媛県をアピールしていってもらいたいですね。
また、地元の食材や料理の美味しさを知って、自分達より下の世代に「食育」として愛媛の食べ物の魅力を伝えられるようになって欲しいと思います。
私が松山生まれ松山育ちの松山っ子ということもありますが、大学生や高校生の皆さんには、もっと愛媛を愛してもらいたいと思います。
なにしろ愛媛県には「愛」が付いていますから。
大河原
進学や就職などで遠くに行っても、地元を忘れないようにして欲しい気持ち、私も良くわかります。
他地域の人達に自分の故郷の魅力を伝えて、地元の活性化に繋がればとても嬉しいことですね。
本日は貴重なお話をお聞かせいただき、有難うございました。
インタビュアーより
次回インタビューは、有限会社アサヒビルメンテナンス 大窪 裕二 代表取締役にお伺させていただきます。
会社概要
社名:有限会社 福助珍味
住所:松山市余戸西2丁目10番29号
TEL:089-971-6503
社名:petit cerise et HIME
住所:松山市三番町1丁目9-18 hoojiroビル3F
TEL:089-947-0139
代表:内藤 成博
事業内容:・宿泊業/飲食業