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みんながいい循環になるような仕組みを
有限会社田那部青果
田那部 昇 専務取締役
- 2017/8/31










ライバルは、家庭で絞るジュース
海外からの安価な輸入品が入ってきていますが、日本の柑橘が売れていくためにはどのようなことが必要だと考えられますか?
海外からの輸入品は、私はあまり気にしていません。日本のものが簡単に負けるとは思っていませんよ。だから、TPPのときも、特に意識はしておりませんでした。逆に言うと海外の販路が広がるんじゃないかと思いました。いいものを売ることにおいて、日本人にかなう人って世界にいないんじゃないですかね。
私たちは、安いジュースと戦うことはないですし、土俵が違うと思っています。ジュースだからと言って同じ扱いではないですよね。だから、その感覚で海外の輸入品が入ってきても、それはその価格帯のジュースと戦って下さい、ということです。本当に良いものを作っていたら脅威にはならないです。
逆にライバルは、家庭で絞るジュースです。お母さんが子供の前で絞ったばかりのジュース。これが一番おいしいよね。
今はやりたいことがあるので他社さんと比べることはないです。自分の会社のことができていない状況で比べても仕方ない。自分のところでできる範囲以上のことをしてもまだ追いつかないぐらいです。
御社の強みと弱みは何だと思われますか?
弱みは資金力の無さです。あと、一番は柑橘農家さんが減っていっているということですね。
強みと言われたら難しいですね。誰でもできることをやっているだけですよ。特別なことはしていないです。良いものを仕入れて、丁寧に加工してそれを売るという当たり前のことをしているので、それは強みにはならないかな。
でも誰でもできることをみんな中々したがらないので、当たり前のことを当たり前にすることが難しいことなのかもしれないな。
学生へのメッセージをお願い致します。
やりたいことをやればいいと言ってあげたいけど、今はやりたいことをやれている人なんて一握りだし、そういう時代ではないよね。私の息子にもやりたいことをやっていいと言っていたけど、3人ともうちの会社で働いてくれています。でも、あきらめない心というのはどこにいっても大切だと思うよ。
インタビュアーより
たっぷりと取材の時間をとっていただき、おかげさまで非常に深いお話を伺うことができました。終始優しく接してくださりながらも、田那部専務の発するお言葉一つ一つには強い意志を感じました。
私の祖母も柑橘農家をしているので、農業は後継者がおらず、力仕事なので高齢者の方が続けていくには大変な作業であるという厳しい現状を感じていました。そのため、このまま高齢化が進み、生産者が不足すると、農業はどんどん衰退していくだろうと思っていました。
しかし、この取材を通して、農業に対する考え方が変わりました。
田那部専務は、厳しい現状の中でも自社のことだけではなく、農家さん、農業を志す若者、愛媛の農業全体を考えた経営をされていました。
今回お話を伺って、農業をやっていくには、熱い思いや良いものをつくることだけではなく、その上できちんと儲かる事が必要だと知りました。儲かる農業にしていけば後継者も生まれるから、そのために自社で仕組みをつくっていくという理論的な考え方が斬新でした。また、農業の未来を守るために、先駆者として新たな価値を一からつくりあげてきて、これからもつくり続けようとする田那部青果さんの姿勢に感銘を受けました。
農業が衰退している現状で、根本の仕組みを変えていかないと、さらなる衰退が予想されます。生産から販売までが農業であり、農業に関わる人たちみんながいい循環を生むシステムをつくっていくべきだと考えます。
田那部青果さんはこれからの新しい農業のカタチを提案しているのではないでしょうか。
このように将来を見据えた取り組みをしなければならないということは、他の業種でも通じることだと思います。
取材の後、ちゅうちゅうゼリーを買ったのですが、本当に果実の味そのままでおいしかったです。
田那部専務、本当に貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました!
高市 奈津美

会社概要
社名:有限会社田那部青果
代表名:田那部 鶴男
住所:愛媛県松山市松ノ木1丁目5-12
TEL:089-952-5656
事業内容:・小売業/卸売業 ・製造業