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「熱中できること 見つけて進んで下さい」
株式会社 グラート
家村 高志 代表取締役
- 2014/7/22
大河原
本日はよろしくお願い致します。
家村代表は名古屋大学の学生だった時に、喫茶店でのアルバイトでコーヒーの魅力に目覚められたとお聞きしましたが。
家村
はい。
私がアルバイトしていたのは、本当に純喫茶と言う感じのお店でした。
実はそれまでコーヒーはあまり好きじゃなかったんですけど、そこで飲んだコーヒーが美味しくて・・・
気がついたらコーヒーで生計を立てていました(笑)
大河原
味を容姿に例えると、まさに一目惚れといったところでしょうか。
家村
一目惚れ、なのかも知れませんね。
接客の面白さもありましたが、
コーヒーの美味しさ・深さ・楽しさに目覚めて、気がついたら味への追求をしていました。
大河原
その後、愛媛に戻られたのは故郷に帰って仕事をしたいという気持ちがあったからでしょうか。
家村
郷土愛というか、当時は自分のやりたいこと、向いていることがわかっていませんでした。
このままではいけないという気持ちはありましたが、大学を卒業してしばらくはフリーターをしていました。
大河原
その状況で何かしなければいけないと思われて、学生時代の経験が活かせる喫茶店のお仕事をしようと決められたのですか。
家村
自分から決めたというよりは、とある喫茶店チェーンの社長に助けられたと言ったほうが正しいですね。
当時、新しい支店が開店することになり、喫茶店の経験があるのだから支店の店長をやってみないかと声を掛けられました。
ありがたい事です。
当時は、まだ自分の本当にやりたいことが見付かっていなくて、折角だからしてみようという感じでした。
後は、「縁」があったのかなとは思います。
大河原
本当に「縁」ですね。
他の経営者様も、そのように人との「縁」が大事だというお話をよくされています。
その後、初めて店長のお仕事をなさってみていかがでしたか。
家村
スタッフをまとめる、ということについて勉強になりましたね。
10年間続けさせて頂きましたが、売上を出し、お店を維持していくには、また別の能力が必要となり、経営能力が大事だと実感しました。
大河原
まとめるというのは、お店の目標に向かって一丸となって頑張る雰囲気を作る、といったことでしょうか。
家村
そこまで一致団結していたかというと微妙ですけど、最後の方になると雰囲気がいいときは、その月の目標を達成できることが感じられたりしました。
何しろ支店の店長という立場は、スタッフと社長の両方から要望・要求が出ますので、それらを上手くすり合わせて、まとめられれば全て上手くいくようなことを感じていました。
大河原
実際どのようにして経営者とスタッフの要望・要求を両立されていたのですか。
家村
何事も本気で、一生懸命、真面目に仕事をすることですね。
自分が率先して仕事をしていると、自分が本気で仕事を取り込んでいると、周りの方もわかってくれますので、自然と好意を持ってもらえ両立に繋がります。
大河原
ありがとうございます。
そこで10年間勤められた後に松山の余戸の方で「カフェグラート」を開店されたのですね。
家村
そうです。
いつ頃からか、独立したいという気持ちが出てきました。
ただその頃は、雇われるより独立した方が稼げるかなといった程度の気持ちで、具体的に「こうしたい」というのはありませんでした。
大河原
もっとお金を稼ぎたくて独立した、ということですか。
家村
お金だけではないですが、もっと稼ぎたいという気持ちはありました。
将来、結婚をして子供も持つことを考えると経済面での不安が大きくなってきました。
それで独立するというのも変な話ではありますが、当時はまだ独力で出来る自信がありましたから(笑)
独立のきっかけを与えて頂きましたのが、このインタビュー記事に載っています「三日月とカフェ」の橘洋二さんのお父様が余戸で喫茶店をしていらっしゃったのですが、「そこを辞めるからやらないか」と誘われて、将来はコーヒー豆屋をしたくて凄く悩みましたが 「やります」と答えて経営者になりました。
大河原
それでは、「カフェグラート」自体は元々、橘様のお父様のお店だったのですね。
家村
はい。
橘さんの時代からほとんどいじっていません。
店もスタッフの方もそのまま引き継ぎました。
大河原
人から引き継いだとはいえ自分の店を持つことと、雇われ店長とでは何か違いはありましたか。
家村
それは大変でしたよ。
それまでのやり方を変えたくないスタッフもいましたからね。
人をまとめるのにすごく苦労して、自分のしたいことが伝えられず、スタッフと心が通ってなかったように思います。
自分のお店を持てば、儲かるのではないかと思っていましたが、実際してみたらものすごく大変でした。
元々のスタッフの方が「自分たちは今までこうして売上を作ってきました」と主張される一方で、自分もやりたいことがあり、お互い理解できなかったように思います。
それが1~2年間も続いていました。
今思えば、スタッフの方にすごく申し訳ない気持ちでいっぱいです。
大河原
それでも、まだ数年続けられていましたよね。
その間に両方が歩み寄ることはありましたか。
家村
別に仲を悪くしようとも思っていません。
毎日、顔を合わせますから時間をかけて分かり合えればと・・
その折に知人の方から講習会・勉強会に誘われたりして、事業計画の立て方や自分の中で仕事の目的など・・
色々と勉強をさせていただきました。
あの時が一番、苦しく、もがいていた頃ですが、おかげで前を向けるようになりました。
ところで大河原さんは、コーヒー豆屋と喫茶店の違いはわかりますか?
大河原
ええと、豆屋さんは豆を売るってことでしょうか。
家村
そうですね。
コーヒー豆屋が売るのは豆だけですが、喫茶店はコーヒーの他にもサンドイッチを提供したり空間を提供します。
大河原
将来はコーヒー豆屋と言われていましたが、現在はコーヒー豆屋ですね。
家村
はい。
喫茶店の話になりますが、喫茶店の経営をすごく甘く見ていたのでしょうね。
売上はよかったのですが利益が出てなくて、立て直すのが大変で、色々試行錯誤はしてはいたのですが、結果的には皆さんに迷惑をかけました。
やはり、僕自身がこういうお店にしたいというイメージを持っていなかったのが原因だと思います。
だから発言がブレて、お客様やスタッフの方々に満足していただけなかったのでしょうね。
そんな状況で「じゃーコーヒー豆屋をしようか」と言えるわけがありませんので、結局コーヒー豆屋をするには、5年かかりました。
大河原
先程、ご挨拶をしていただきました奥様もよくお仕事をお手伝いをさてますね。
家村
そうですね。
実はカフェグラートで最初、全然上手く行っていなかったスタッフの一人です。
最初に出会った頃はいがみ合ってばかりいましたね(笑)
そこから付き合い始めて結婚して、
「この人と二人でコーヒー豆屋をしよう」と思いました。
長時間働くのではなく、自分のやりたいこと、熱中できることをしていこうと思いました。
大河原
その熱中できる事というのが、コーヒー豆屋さんだったというわけですね。
家村
ずっとやりたいと思っていながらやれなかったことですから。
それでも決断をして思い切ってやりましたよ。
奥さんの両親は彼女が不幸になるんじゃないかと言ってすごく反対をされました。
大河原
奥さんの両親をどうやって説得したのかも少し気になります(笑)
家村
僕はコーヒー豆屋をやりたいのでします。
本当に美味しい豆を選び、安全安心な豆を販売したいということを訴えました。
なぜ喫茶店で一緒に出来ないのかとも言われましたが、喫茶店で飲むお客様と豆を買って家でいれられるお客様とでは全然違うので、後者の方を選び進みたいと言いました。
まあ、最終的には諦められた感じですね。
大河原
それ以来コーヒー豆屋一筋なのですね。
家村
はい。
そこからコーヒー豆屋を始めました。
ただコーヒー豆屋を始めてもカフェは続けていました。
僕がカフェをして奥さんがコーヒー豆屋をするという形で・・
しかし中々お客様が来てくれませんので、それならこちらから行こうとイベントに出るようにしました。
大河原
出張販売などもされていますね。
家村
そうですね。
そこから段々知られるようになって、イベントに出るのならカフェができないと言う話になり、運よく、手を上げてくれる人がいたので、去年の12月にその人にカフェを任せ、僕も奥さんもカフェには出ていません。
大河原
もう完全にコーヒー豆に専念しているのですね。
家村
イエムラコーヒーは平成24年11月に立ち上げたのですけど、実際に動き始めたのは25年の2~3月くらいからでした。
それからイベントにも出店するようになって、こちらの方は、最初の2ヶ月は僕が主に動いて、そのあと奥さんも加わってきました。
大河原
今月の末に北条商店街にお店をオープンされるとの事ですが。
家村
いつかは店舗を構えなければと考えていまして、あるイベントの時にそれを伝えたところ、北条駅前の土地を提供していただきました。
大河原
ありがたいお話ですね。
家村
そうですね、その日のうちに大家さんとお会いして、話をさせていただいて即決をしました。
大河原
家村代表のお話をお聞きしていると、つくづく人の「縁」って大事だなと感じられます。
家村
今度オープンする北条駅前の店舗も松山大学の学生さんが手伝ってくれるんですよ。
嬉しいことです。
大河原
それは嬉しいことですね。
やはり、一生懸命に仕事に打ち込んでおられる姿が共感をされているのではないでしょうか。
オープンされると忙しくなりますね。
家村
それでも、ゆっくりしていますよ。
コーヒー豆屋を始めた理由の一つに家族との時間を大事にしたいという思いもありました。
オープンするお店も営業時間は11時から18時まで、日曜日は定休です。
家族と一緒に晩御飯を食べられ日曜日は、子供と過ごせるようにとようにしています。
家族を大切にするスタイルは崩さないようにしています。
大河原
父親の役割、ということですね。
ところで、家村代表の考える「コーヒーを通じて伝えたいこと」というものはございますか。
家村
今ではコンビニや自動販売機ですぐ買えるコーヒーがありますけど、
やはり農家さんが作った自然の味を知ってもらいたいですね。
僕らの子供の世代には急須でお茶をいれることが一般的でしたが、今の子供たちは急須を見たことないという子がいてもおかしくないので、もっといれる文化というか、楽しみを伝えていきたいですね。
大河原
手間を隙かけて作ることの楽しみですね。
家村
そういう感じのことを、僕はコーヒーで伝えていきたいと思います。
僕自身も、将来のことについて真剣に考えていると、奥さんがカセットコンロを持ってきて、焙烙(ほうらく)と言いますが、生豆を目の前で焙煎し出すんですよ。
そして、ガリガリって挽いてコーヒーをいれてくれて、それを飲むと、精神的に落ち着きます。
さすがに焙煎を家でやって下さいとまでは言いませんが、家でいれることによって家族間のコミュニケーションになると思っています。
大河原
コーヒーやお茶をいれる過程を通じて、心にゆとりを持つということでしょうか。
家村
そうですね。
家族に笑顔があり仕事場にも笑顔があり、その笑顔が、コーヒー豆であれば凄く嬉しいことです。
大河原
ありがとうございます。
最後に、若者に向けてメッセージをお願い致します。
家村
自分が好きなものや熱中できるものを、一つでいいので持って欲しいですね。
コーヒー豆屋の売上って喫茶店の1/2~1/3くらいですごく薄利ですが、すごく幸せです。
それでも、食べていければいいと言うわけでもないので、将来的には店を大きくして、楽しさをもっと伝えていきたいなと思っています。
そういうことを、コーヒーに携わる中で感じるようになったので、
今の若い人にも、自分がやりたいこと、熱中できることを早く見つけて、迷いながらもそれに向けて突き進んでほしいですね。
最初は成り行きで始めたのでも、いいですから。
大河原
若いうちにそういうことを見つけられるといいですね。
本日は貴重なお話をお聞かせいただき、有難うございました。
インタビュアーより
確かにコーヒーやお茶を自分の手でいれると、水の動きに、香り、色合い等、心が落ち着くし、周りとの会話も弾みます。
これからは自分でコーヒーを注ぐたびに、家村代表の言われた「いれる文化・いれる楽しみ」という言葉が思い出されます。
自分のやりたいことに思う存分取り組めるのは本当に素晴らしいことだし、それを助けてくれる家族がいるのも、私からすると、また羨ましく幸せなことです。
ここでは書き切れなかった部分もありますが、家村代表の豊かな人生経験からくる、コーヒー豆、そして家族への思いが強く伝わってくるインタビューでした。
美味しいコーヒーを出して頂きありがとうございます。
ご馳走様でした。
大河原 慧
次回インタビューは、株式会社 笹源 篠原 勲 代表取締役にお伺させていただきます。
会社概要
社名:株式会社 グラート
代表名:家村 高志
住所:愛媛県松山市宮内乙11-7
TEL:0898-904-6526
URL:http://egaono-coffee.shop-pro.jp/
事業内容:・宿泊業/飲食業 ・小売業/卸売業