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「百聞は一見に如かず」
株式会社 ホンダプリモ砥部
篠森 健一 代表取締役
- 2014/9/10
篠森
(名刺を見て)
大河原さんはやはり熊本出身なのですか。
お電話でお話をした感じだと九州のご出身かなと思っていたのですが当たりでしたね(笑)
大河原
えっ、 電話での話し方だけで判るのですか(笑)
篠森
やはりイントネーション、語尾が若干違いますから。
色々な人と接しているとそういうことに段々気付いてきますよ。
大河原
ごまかせませんね(笑)
本日のインタビューはよろしく願い致します。
まずは、今月付けでの新代表就任、おめでとうございます。
篠森代表は、お父様が先代の社長ということですが、子供の頃、経営者のお父様をどのように思われていたのでしょうか。
篠森
元々、父が森松で自動車整備工場を開いたのですが、その時に一緒に自宅も建ちました。
すぐ隣が職場だったので、物心が付いた時から、作業の様子などを見て「整備ってこうするんだ」「自分も車に乗ってみたい」と子供ながらに思っていました。
大河原
お父様のお仕事と環境に影響されて、車に興味を持たれたのですね。
篠森
そうですね。
子供の頃から車が近くにあり、その環境が大きな要因になっているのでしょうね。
大河原
会社を継ごうと思われたのも、お父様の仕事ぶりを見ているうちに、自分でも同じことをしてみたいと思われたからなのでしょうか。
篠森
全く同じことは出来ないとは思いますが、本質の部分は父から学んでいくべきだと思います。
大河原
本質ですか。
篠森
本質とは必ず受け継いでいくべきものです。
初代の経営者の方々はそれを2代目・3代目として継承して欲しいからこそ、その大事な本質の想いを経営理念や経営方針などに可視化し置き換えているのだと思います。
僕はまだまだですが、ただ言葉として捉えるのではなくて、その意味を自分の頭の中で考えて、行動に落としこめた時にこそ、初めて継承ができたのだなと思います。
大河原
それを実行できると本当に、一人前の経営者として大成できたという気持ちになるのでしょうね。
篠森
私には、まだわかりませんが、そのような気持ちになれるのでしょうね。
父が創業して、ここまで会社とお客様を育てるまでには、家族の見えないところで大変、苦労をしたのだと思います。
私は父の作った基盤を更に発展をさせていき、サービスの向上を追求し、より多くのお客様に当社のファンになってもらいたいと思います。
アットホームでディーラーらしくない、ホンダプリモ砥部の「良さ」を私を含めスタッフを通して、車を身近なものに感じていただけたら嬉しいです。
大河原
車を身近にというのは道具としてではなくて、いわば家族の一員であるように扱って欲しいということでしょうか。
篠森
そのような感じです。
表現するのが上手ですね(笑)
大河原
ありがとうございます(笑)
篠森
現在、アットホームなお店作りを目指しています。
アットホームなお店作りは凄く難しく、構築ができた、これで完成だってことがありません。
マニュアル通りに仕事をしているほうが楽だと思います。
大河原
ビジネスライクではなくて、人の温かみが感じられるお店にしたいのですね。
篠森
それでいいと思いますよ。
特に愛媛県はそういう文化があるので、都会的なやり方は合わないと思います。
都会に行けば行くほど、1人1人と深く付き合うことは出来ないのではないでしょうか。
1000万もの人口がある大都市だったら、会おうと思っても一回しか会えないかも知れない、そうなるとお互いを深く知ることが出来ず、形式のみの、お付き合いばかりになるでしょう。
一方、愛媛県はそこまで人口が多くないですから、お互いもっと密接な関係を築いていく文化を作り上げたほうが楽しいと思います。
大河原
人が少ない分、密にコミュニケーションが取れるのですね。
篠森
そうです。
付き合いが密になるほどお互い報告・連絡・相談がスムーズに行くと思うのです。
それが地方の良さだと思っていますし、アットホームな社風の当社だったら活かせるのではないかと思います。
大河原
アットホームな店作り、とても楽しみです。
また10年後にどのようなお店になっているのかインタビューしたいです。
篠森代表は学校を卒業された後、すぐにお父様の会社に就職されたのでしょうか。
篠森
いいえ。
大学を卒業したあとに、車の構造や実際に整備する上での知識を知っていなければお客様にアドバイスが出来ないと思い、2年間、大阪のホンダ関西自動車整備専門学校に通いました。
卒業後は広島にあるホンダカーズの店舗で、半ば修行として自動車整備やセールスの経験を積ませて頂きました。
大河原
また学校に入り直して、その後は広島で修行とはすごく勉強熱心ですね。
直接こちらに戻ってこなかったのは、何かお考えあってのことだったのでしょうか。
篠森
大河原さんはインドネシアに行かれたことがあるそうですね。
大河原
はい。
3ヶ月くらいですが。
篠森
それと同じだと思いますよ。
ずっと日本にいたら、日本の良さ、悪さって見えてこないでしょう。
それと同じで、もしまっすぐ当社に戻ってきていたら、他との比較ができず、違いも見えなかったと思います。
県外の知識を取り入れ学ぶ経験をさせていただくことが出来たのは非常に良かったと思います。
大河原
県外で働く中で、自分が経営者になったらアットホームなお店作りをしたいと考えるようになったのでしょうか。
篠森
いいえ、それは当社に戻って初めて気付いたことです。
当社には元々、アットホームで相談しやすい社風があり、これは父が作り出した理念や考え、本質が現れたものだと思いますし、それを引き継いでいくことが大切だと今は考えています。
当社のお客様もこの雰囲気を気に入って下さっているので、これを活かしていくべきです。
180度全く違う対応をされたらきっと戸惑われるでしょうし、我々もいきなり対応の仕方を変えることは出来ないでしょう。
私は県外で働いていた経験があったから、帰ってきたときに他所と比較ができ、当社の良さが見えたのではないかと思います。
御社の石原代表も東京で活躍をされ、色々な環境で磨かれた方ですし、自分からそういう環境に飛び込んでいったのは凄いと思います。
石原代表から見える愛媛・松山を聞いてみたいです。
大河原さんだってそうでしょう。
1人でインドネシアに行くのは勇気が要ったのではないでしょうか。
大河原
そうですね。
予め勉強はしていたものの、言葉も思うように通じませんでしたし、買い物やバスの乗り方等が日本と全く違いました。
篠森
しかし、そこで生活するためには慣れないといけないでしょう。
解らないままだったら何も出来ないので、最低限必要なことを学ばないといけませんよね。
それがベースになって自分の学ぶべきものが何か、はっきりとします。
大河原
篠森代表も、アットホームな店作りを続けていくために、今まさに勉強していらっしゃる途中ということでしょうか
篠森
そうですね。
しかし勉強するだけでなく学んだ上で実践すること、試行錯誤が必要だと思います。
大河原
確かに、どんなに素晴らしい考えでも机上の空論ではいけませんからね。
篠森
私は、漢字の存在って凄いと思います。
漢字って偏や旁などの部首を組み合わせて、1個1個の文字に意味を込めて作っているわけでしょう。
何万文字とありますが、全部覚えている人はそうそういないと思いますし、誰がどうやって考えてどうやって受け継いでいったのかと考えると、凄くないですか。
大河原
それも、先人たちの試行錯誤の賜物なのでしょうね。
篠森代表は、ご自身の中でターニングポイントだった思う、出来事はございますか。
篠森
初めて車を手に入れたときは、とても嬉しかったですよ。
自動車整備専門学校で、ホンダの理念は「買う喜び、売る喜び、創る喜び」の3つの喜びだと学びまして、父から会社を受け継いだらそれを伝えていきたいと思いました。
自分でもお客様の立場で体感して解ったことなのですが、お客様からは車に乗る喜び、買う喜びを、メーカー様からは作る喜びを教えていただきました。
ターニングポイントは、愛媛から離れ県外で頑張ろうと思った時です。
大河原さんは車をお持ちですか?
大河原
いいえ、まだ持っていません。
篠森
車を買ったらどこまで行けるか、どんな人に会えるか、自分の世界が広がりますよ。
それだけに、自分に可能性を感じるのだったら、車を持って欲しいと思います。
大河原
車には夢がありますからね。
篠森
車は何年・何十年経っても夢のあるものであり続けて欲しいですね。
ただの乗り物と言う捉え方もできるかもしれませんが、自分で所有して自分で乗る、そこに楽しみがあるのではないでしょうか。
大河原
私も早く、車を手に入れたいです。
篠森
車に乗っていると楽しいですよ。
確かに歩いたり、自転車を漕いだりするのもいいですが、その間は他の事が中々出来ません。
しかし車だったら外でも自分の空間を確保でき、移動時間も短くなるので、好きな曲を聴いたり、停車中は好きなDVDを観たり出来ますよね。
大河原
その通りだと思います。
篠森
車があれば他にも、空いた時間で自分のしたいことを追求できるので、自分への投資にもなります。
たとえば、予め録音しておいたセミナーの内容を車内で聞き直して、自分のモチベーションを高めて仕事に臨むとかできますから。
効率もよく仕事が楽しくなりますよ。
大河原
移動しながらそういうことができるのは、確かに車の魅力ですね。
篠森
勿論メリットだけじゃなくてデメリットもあります。
購入するには相応に費用が必要になりますし、運転していて事故のリスクもあります。
それらのデメリットよりも自分にとって「いいな」と思ったメリットのほうが勝てば、買う気になると思いますよ。
そして、一度所有したら手放したくなくなりますから、乗り続ける為に必死で頑張るのだと思います。
大河原
移動時間の短縮や自分の空間だけでなく、やる気を引き出すのにも役立つとは思いませんでした。
篠森代表は、経営者として一歩踏み出されたばかりですが、将来経営者としてこうなりたいという理想像はございますか。
篠森
まず、お客様や従業員とアットホームでフランクな関係性を築けるようになりたいと思っています。
フランクに喋るには、言葉をある程度崩して、解りやすく伝えることが必要なので、もっと言葉を覚えて、上手く伝える能力を上達させなければいけないなと思っています。
大河原
あまり専門用語を並べられても、一般の方は解らないですからね。
篠森
はい。
「エンジンのピストンのリングが云々」と説明したところで、車に詳しくない人はさっぱりですから、それなら 「エンジンの調子が悪いですよ」と一言で言ったほうが解りやすいですよ。
そういう風に、言葉をなるべくシンプルにして、相手に解りやすく伝えることは、お客様とのコミュニケーションだけでなく、文化を継承していく上でも大切ではないかと思います。
大河原
有難うございます。
それから篠森代表の場合は、先代社長のお父様がいらっしゃったので、理想像といっても、それに影響される部分が多いのではないかと思うのですが
篠森
創業者精神など、そういった本質的な部分は引き継いでいけたらなと思います。
その上で、理想とは・・
大河原
理想とは。
篠森
理想とは、現実を否定することなんですよ。
現実を維持していたら、理想には近づけません。
同じことだけ、できることだけをしていたら、それは守りに入っているも同然なのです。
それを否定して、新たなことにチャレンジするということです。
その上で私が何をしているかといえば、社員さんにもお願いして言っているのは、「地域に密着していきたい」ということです。
大河原
地域に密着ですか。
篠森
はっきり言えば、ここは田舎です。
だから田舎のやり方で、田舎らしく田舎で出来る仕組みを作って行こうと考えています。
大河原
田舎らしくというと、お祭りとかに積極的に参加したりとかでしょうか。
篠森
お祭りもそうですが、地域のイベントに積極的に参加したり、社会貢献の活動に参加したり、より地域の人々とコミュニケーションを取れるようにしていきたいです。
近隣の方々と共に笑い、共に年齢を重ねるのが「理想」です。
これは田舎じゃないとできないことだと思いますし、当社の一番の強みにもなる と思います。
大河原
なんだかワクワクしますね。
これまでの従業員の方はずっとお父様の下で働いてこられたので、後を継ぐとなるとプレッシャーがあるのではないでしょうか。
篠森
プレッシャーを感じることは余りないですね。
父と私は全く同じではないですから。
ただ、経営理念等の想いをしっかり軸としていれば問題は無いかなと思います。
大河原
本質をわかって、行動に反映できればよいということでしょうか。
篠森
時代と共に、変えていかなければいけないことはあると思います。
例えば、昔は全て手書きで仕事をしていましたが、今ではコンピュータを使って書類を作っていますよね。
しかし本質を変えてはいけないと思います。
人と人とが出会って、コミュニケーションを取らないと、物は売れません。
その部分はむしろ、より強くしていくべきではないでしょうか。
各会社の経営者の戦略もあると思いますが、この本質をわかって、社員全員がそれに則って行動できればいいのではないかと思います。
私は天才でもカリスマ性があるわけでもないので、それぞれの長所を生かして、お互いがお互いを補える関係性が作れたらいいと思います。
大河原
有難うございます。
これからも篠森代表が考える本質を大事にして、アットホームなお店作りを頑張ってください。
篠森
有難うございます。
大河原
最後に、これから社会に出て行こうとする若者に向けて、メッセージをお願いしているのですが。
篠森
座右の銘の、「百聞は一見に如かず」です。
ご存知ですよね?
大河原
何かについて、100回聞くよりは一目見たほうがよほど多くのことが解るという意味ですよね。
篠森
そうです。
それだけなのです。
いくら話を聞いて頭の中で思い浮かべても、それはイメージでしかありません。
どこにどんなものがあるかなんて解らないのです。
大河原さんのインドネシアの話でいえば、街に原付が一杯走っているところを実際に見てきたでしょう。
私は実際には見ていないので、所詮伝聞のイメージでしかありません。
そこが違いです。
真実を見ようと思ったら現地に行かないと、そこにしか真実は無いのでしょう。
ですから、学生のうちに、海外でも、どこでもいいから今の環境から離れてみてはどうでしょうか。
自分なりに新しい発見が必ずあります。
もし海外に行かれるのなら、 そこで改めて日本の良さ・愛媛の良さを知ってもらいたいと思います。
大河原
日本の良さというと、例えば安全な水が簡単に手に入ることなどでしょうか。
篠森
それも1つの強みだと思いますよ。
今後ますます環境への影響が重視される中で、日本には豊富な水源がありますから。
水については、不思議ですよ。今コンビニでペットボトルのミネラルウォーターを買ったらいくらぐらいしますか?
大河原
500mlで100円から150円だったと思います。
篠森
ではガソリン1ℓはいくらぐらいですか。
大河原
160円台でしょうか。
篠森
すると、500mlの水の方が高いのですよ。
不思議ですよね。
それほど付加価値・ブランド力のあるものを日本は持っているのです。
大河原
なるほど、そのような視点で水について考えたことはありませんでした。
日本の強みということについて、もっと考えてみようと思います。
本日は貴重なお話をお聞かせいただき、有難うございました。
インタビュアーより
次回インタビューは、瀧和グループ 瀧山 和也 代表にお伺させていただきます。
会社概要
社名:株式会社 ホンダプリモ砥部
代表:篠森 健一
住所:愛媛県伊予郡砥部町拾町7-4
TEL:089-956-3030
URL:http://dealer.honda.co.jp/hondacars-matsuyamaminami/
事業内容:・小売業/卸売業 ・サービス業