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「早く失敗しろ」

ゼンソー
懸田 剛 代表

  • 2014/9/29
i-cath-zensow

大河原
本日はよろしくお願いいたします。
懸田代表がプログラミングに興味を持たれたきっかけは何でしょうか。

懸田
大学は経済学部経営学科で、いわゆる理工系ではありませんでした。
ただ、元々手を動かして物を作るのが好きだったのと、ゼミでコンピューターを触ることがあって、そこでプログラムを作って実際に動くのを見て、「あーこういうのを作る楽しさもあるのだな」と思って、そういうのを作りたいなというのが最初の動機でした。

大河原
それが最初の出会いだったのですね。
その後、勤められていた会社を辞めて、一度独立されたそうですが、それは何故だったのでしょうか。

懸田
大学卒業後は、情報システム関連の企業で、ソフトウェア技術者というかプログラマーとして勤めていました。
就職して3~4年目ぐらいに、インターネットが一般にも普及し始めました。
それまではネットワークにアクセスできるのは大学の中などに限られていましたが、個人や企業でもインターネットがよく使われるようになってきて、それに携わることが出来る仕事をしたいと思うようになりました。
しかし私が勤めていた会社だと、それまでのお客様とのお付き合いもあるし、当時のシステムというのは企業の中のネットワークにサーバとメインコンピューターとクライアントを繋げている、いわゆるクライアント・サーバモデルしかなくて、私にとっては面白くありませんでした。
日に日に新しい技術に触りたいという気持ちが強くなり、色々ありましたが2000年にフリーランスのプログラマーになりました。

大河原
テクノロジーの生活をしていますが、プログラムとかITは難しいというイメージがあり、別世界の感じがします。
フリーランスになってからは、ネットを使ってどのようなことをしていらっしゃったのでしょうか。

懸田
プログラマーというか、私はソフトウェアエンジニアと呼んでいましたが、お客様から注文を受けてウェブ上のシステムを作ったり、今でこそ当たり前になりましたが、昔はネット上でものが売買できるところなんてなかったので、eコマースのサイトを作ったりという仕事をしていました。
やはり自分の時間を自由にできますので、仕事とは別に、今ほどではないですが東京でエンジニア・技術者の社外での集まりというのが結構ありまして、色々な会社の人とある技術について勉強会をするとか、ワークショップをするとか、そういったことをやり始めたのです。
私が勉強会を始めるきっかけとなったのがエクストリームプログラミング(以下XP)で、その本が2000年に出たのですが、それを対象にした勉強会で、我々はコミュニティと言っていましたが、それの立ち上げメンバーとして関わっていました。

大河原
XPとは何でしょうか。

懸田
一言で言えば、アジャイルソフトウェア開発(以下アジャイル)というソフトウェアの作り方のうち、一つの類型です。昔からあったのは、ウォーターフォール型といって、まず要件定義と言って最初にお客様の要望を聞き、それに基づいて必要なシステムを設計します。
その設計に基づいて実際にプログラムを作って、ある程度作ったところでテストを行います。
無事にテストが終わった段階で納品ということになります。
一回決めたらそれに従って水が流れるように進めていくものです。
ただそれだと、途中で要件、すなわちお客様の欲しいものが変わってしまったり、最初に作った設計が実は駄目だったりということがあります。
また、会社を取り巻く環境が変わってしまって、最初に考えたプログラムも3年掛けて作っていたら時代遅れになってしまったりします。
そうすると、最初に決めたままに作っていてもあまりいいものが出来ないとか、プロジェクトが延期に次ぐ延期で費用ばかり掛かってしまうとか、そういうリスクも出てきます。
それに対する一つの解決策としてXPやその他の手法が数多く生まれました。
今では広くアジャイルと呼ばれています。
それは、1週間や2週間の短期間で、設計・実装・テストの全部を行い、お客様に「いかがですか」と見せて、「これでいいです」とか「やっぱりここをもう少し変えて欲しい」みたいな要望の変更を短期で受け入れて、少しずつ作って、少しずつ確認しながら組み上げていこうというやり方なのです。

大河原
お話を聞くと凄くいいですね。
柔軟に、臨機応変に対応できるのが強みなのでしょうか。

懸田
その通りです。
当時、既に日常的にこういうことをしている方はいたのですが、本にまとめられていることに感銘を受けまして、そういうことを好きなエンジニアの方たちが集まってコミュニティなどを作っていたのがきっかけです。

大河原
なるほど。
そのXPを、実際の仕事に応用することもしていらっしゃったのでしょうか。

懸田
はい。
ただ、何でもそうなのですが、新しいアイデアがあって、それを自分の仕事ですぐ使おうと思ってもできないので、まず自分の出来る範囲から始めました。
ちょっとずつ、仲間内で試しながら、「こんなのやってみてよ」「こうやったらよかったよ」という意見をお互いに共有したりして知識を付けていきました。
そこで面白いのが、最初は20代の若者がそういうことをしているわけですが、段々と歳を重ねて、地位も上がってきますよね。
そうすると、当時の若者が今や事業部長になっていたりして、「これから我が社の事業部でもXPを使う」ということになったりするのですよ。

大河原
それは確かに面白いですね。
若い時に新しいことを勉強した経験が後々で活かされるわけですね。

懸田
新しいことを実行しようと思った時に、どうしても「今までこうしていたから」という慣習や、「メリットはわかるけど出来ないよね」という変化への抵抗もあります。
私は新しい事や、いいと思ったものを見据えて、どうしたら上手く現場に転用して成果をあげられるか、ということを考えることにしています。
経営者と関係ない話ですいません(笑)

大河原
大丈夫です。
XPについて具体的な説明を聞いたのは初めてだったので興味深かったです。
その後また会社に就職されたのですよね。

懸田
フリーランスになった後に、XPやアジャイルを先進的に手がけていることで有名な会社の方と知り合いになって、その方に誘われ入社をしたのです。
私も独りで仕事をしていくことに限界を感じており、チームで仕事をしたいなと思い就職をしました。

大河原
なるほど。
志を同じくする方がいらっしゃったのですね。

懸田
はい。
エンジニアとして開発を行う、あるいは技術コンサルタントとして、新しいソフトやツールの使い方、アジャイルのやり方などについても、お客様に指導をしていましたが、2010年に妻の家庭の事情により、東京から妻の実家の松山に移り住むことを決断しました。

大河原
それで松山にいらっしゃったのですね。
ただ、IT関連の仕事は、比較的時間や距離の壁が低くなり、どこでも仕事ができるイメージがありますが、懸田代表の場合はいかがだったのでしょうか。

懸田
システム開発の仕事であればそれは確かにあります。
しかし私の場合は、メインはコーチといって直に現場に行ってお客様の活動を観察したり教える立場の仕事になっていましたので、遠方からオンラインで仕事をすることが出来なかったのです。
かといって、私が松山に来た当時の愛媛では同じ仕事をしようと思っても見つかりませんでした。
加えて、私はこちらに知り合いがまったくいなかったので、最初の2~3年、去年ぐらいまでは、基本的に県外に出張に行って仕事をしていました。

大河原
愛媛と東京を往復しながらの仕事は、ハードですね。

懸田
東京だけでなく島根、大阪、広島など、色々な地方で仕事をしています。
東京にいた頃は松山よりも仕事の需要はあるし、前職の付き合いなどでメーカーさんとかにも行くことが出来たのですが、出張ばかりしているとこちらでの知り合いがまったく増えませんでした。
また、私は子供が3人いるのですが、週末しか家にいないこともしばしばで、子供のためにも良くないと思いました。

大河原
それで、徐々に県内で基盤を作ろうと考えられたのですね。

懸田
はい。
去年ぐらいからそういう方向にシフトしています。

大河原
愛媛アジャイルを広める活動をしていらっしゃるのでしょうか。

懸田
そうですね。
ビジネス以外のところでは、仲間作り、コミュニティ作りを2011年からやっています。
「Agile459」(アジャイルシコク)というのですが、月一回、県内外から人が集まって仲間同士で勉強会をしています。
松山でアジャイルに関してのセミナーを開いたりお客様を探したりすることに今まさに取り組んでいる途中です。

大河原
なるほど。
そのお客様というのは、具体的にどういった方がいらっしゃるのでしょうか。

懸田
一番近いのはIT関連の会社さんです。
ただ、その会社さんもどこか別のユーザー企業さんから発注されてソフトウェアなどを作ってっているので、大元の企業さんの理解を得ないと、いくら私がITの会社さんに「こういうやり方がいいよ」と言っても話を聞いて頂けません。
今後は営業面も改善する必要があります。

大河原
懸田代表のお客様のお客様に、アジャイルについて理解して頂く必要があるのですね。

懸田
そうですね。
これからは発注側の、ITを使ってビジネスを上手くやりたいと考えている会社さんにもお話を伺いに行こうと考えています。

大河原
有難うございます。
そのようなアジャイル普及の取組みの他、どのようなきっかけ、想いで今の会社を立ち上げられたのでしょうか。

懸田
2010年に松山に来て、1年ぐらいは個人事業主として仕事をしていたのです。
あるとき東京の知人と話をして、会社組織にして東京と松山で上手く連携できたらいいんじゃないかということになり、合同会社という形態で立ち上げました。
合同会社は英語でLLCとも言いまして、会社として立ち上げるには一番敷居が低く、すごく簡単にできます。
法人化するにも色々とメリット・デメリットが有るのですが、いざ会社さんと取引する時に、会社組織にしていたほうが都合がいい場合もあります。
実際、小さいながらも会社を立ち上げたことで、個人では直接お付き合いできない企業さまともお付き合いが出来るようになりました。

大河原
今は小さいけど、これからは松山でお客様を多くしていこうと考えていらっしゃるのですね。

懸田
はい。
松山で仕事をする理由として、人との繋がりを作ることの他にもう一つあります。
今は東京一極集中が著しくて、地方に力がなくなっていると言われますが、私は東京に戻らないで松山に骨を埋めるつもりなので、「自分がいる場所をよりよくしたい」という強い思いがあります。
一般論として、中央の方で何かが起こっても、地方にはそれが遅れて届くきますよね。

大河原
そうですね。

懸田
nakakiji-cultureworks

松山は人口もそれなりに多いし、今現在あまり困っていないような雰囲気でも、中央から波が来るとあっさり呑まれる危険性はあると思います。
アジャイルという考え方は、ソフトウェアを作るだけでなく、社会の変化に機敏に柔軟に対応する上で非常に役に立ちます。
実際に欧米、特にアメリカではアジャイルという考え方がビジネスを成功させる手法として必須となりつつありますし、アジャイルを組織全体に広げていこうとしているところも多く存在しています。
要はそういった外部の波に飲まれないでいかに生き残るかというために、愛媛・松山で自分がなにを出来るかをまずしていきたいという気持ちが一番大きいです。

大河原
有難うございます。
愛媛の県民性というと、保守的とか変化を嫌うといったことがよく言われますが、そのような中でアジャイルを広めるのは大変なことだと思います。

懸田
なにも無理やり物を売るみたいな話は考えていません。
一見上手くいってるように見えても、ちょっと突っ込んで見ると様々な悩みは多くあると思います。
組織としての今の良さを活かしながら、そういった所を徐々に改善していって、いつの間にかよい(アジャイルな)状態に全体がなっていました、というアプローチで頑張っていこうと思っています。
勿論話の流れでアメリカや東京を引き合いに出すことはあると思います。

大河原
押し付けるのではなく、相手の本当に必要な物を共に考えていく姿勢が大事ですね。

懸田
勿論です。
そういうことが大事だと思って自分でやると決めたので、何年かかるか知りませんが、長期的スパンで少しずつ繋がりを作って、少しずつ知って頂きたいと思います。

大河原
有難うございます。
他にも、パーマカルチャーとか、あまり聞き慣れないことをしていらっしゃいますね。

懸田
パーマカルチャーもコミュニティベースとビジネスのもう一本の柱としてやりたいと思っているものです。
パーマカルチャーとは持続的な社会と生活をデザインするということなのですが。

大河原
持続可能な社会ということについては私も農学部出身なので、考え方はイメージがつきます。

懸田
そうでしょう。
一言で言ってしまえば循環型社会ということなのですが、それと絡んでくるものとして、地方が独立したサイクルで経済を回す仕組みを考えていくことがすごく大事なのです。

大河原
いかに地域が自立して、経済を完結できるかということでしょうか。

懸田
そうですね。
地域循環といったことも視野に入ってきますし、個人レベルでも自分で野菜を作るとか、生ゴミをそのまま捨てずに堆肥にするとか、いくらでもできることはあります。
私も畑をやっていますし、そういったことを広めて、かつビジネスとして繋げることもしたいなと思います。

大河原
なるほど。
パーマカルチャーとアジャイルがどう繋がるのか、興味があります。

懸田
実はそういう話を先日、東京で発表してきました。
アジャイルについてちょっと俯瞰して問題を考えると、ビジネス環境の変化やお客様の要求の変化とは、一言で言ってしまうと「不確実性」です。
いつ何がどのように変わってしまうか判らないので、常に現状がどうなっているかを見ながら、変化したら即柔軟に対応してやり方を変えていきましょうというのがアジャイルの考え方です。
一方パーマカルチャーでは、自然を相手にしますので、勿論人間の思い通りにはなかなか行きません。
結局それも自然という不確実なものに対して、人がどうやってアプローチするかという考え方なのです。

大河原
両方共、不確実性に対してどのように対応するかというのが共通する部分になるのですね。

懸田
はい。
それに気付いてから、更に他の領域、例えばまちづくりや組織論を見渡しても不確実性へのアプローチといったことが出てくるのです。
従って、現代社会に存在する問題の多くにおいて、不確実なものに対してどう対応するかというところが重要なのではないかと考えました。

大河原
なるほど。
そう考えると、不確実性というのは「リスク」という言葉でも置き換えられる気がします。

懸田
リスクというと、マイナスのイメージというか、「何処に落とし穴があるか」みたいな話になりますが、ここでいう不確実性にはプラスのイメージも含まれます。
それを「創発力」というのですが、最初はそんなことを考えていなかったけど、物事を進めていくうちに思いもよらぬことが出てくるみたいなことがあるのです。

大河原
何が起きるかわからないけど、起こったことに対して、それが悪ければ改善するし、良ければ取り入れようという考えなのでしょうか。

懸田
そうですね。
不確実性に対応するということは、人間にコントロール出来ないことがあると認めて、それに対して、どうアプローチするかという話なので、そのように発想を転換しないといけないのです。
仕事で言えば、「どうやってすべてをコントロールするか」ではなく「コントロールできない部分を認めて、どうやって上手く対応していくか」に変わらなければいけないのです。
今の技術や知識を持った上で、不確実性にどう対応するかということについては、考える余地は大いにあると思います。
こんなことを言い出すと皆ポカーンとしてしまうのですが(笑)

大河原
いえ、大変興味深い話です。
話を戻しまして、先ほど、アジャイルを広めるためにはソフトウェアのユーザー企業さんに理解して頂かなければならないとおっしゃいましたが、そういった方も含めて、どのような方法でアジャイルをより効果的に普及しようと考えていらっしゃるのでしょうか。

懸田
アジャイルと一言で言っていますが、実は色々な側面がありまして、私は大きく4つに分けて考えています。

一つは先程述べた不確実性への対応の仕方ということです。
例えば「3ヶ月後に凄いものが出来ますよ」ではなく、少しずつ確認しながら、漸進的に成果を出していく、言い換えると、早期からちゃんと価値のある物を出し続けていくことです。
次に、そういうことをする人たちを、いかにチームとしてまとめるか
組織は役割分担がしっかりしてて、チームの中でも一人一人の役割が明確にされるのですが、明確にし過ぎると、自分の仕事が終わっても隣の人を助けないなど、自分とチームの目標・目的がかけ離れてしまうのです。
アジャイルでは、いかにチームがチームとして動いていくかに着目するので、チームワーク形成の側面もあります。
三つ目は、ビジョンとコンセプトをどう作るか、どう関係者に伝えるか、そもそも何を作るのか、何のために作るのか、といったことを明確にして、周りと共有しながら仕事を進めていくことです。
今までの話は実はソフトウェア開発に限りません。
四つ目としてソフトウェアエンジニアリングのスキルがあるのです。
チームワークにしても、ソフトウェアを作っていなくても多くの組織で当てはまります。
ビジョンやコンセプトも、ソフトウェアに限らず新規に製品や企画を作るといったことにも応用できるのです。
なので、アジャイルとして一括りにしなくても、個別の部分でもお客様のお役に立てるのではないかというところをアピールしていこうかと考えています。

大河原
新しいソフトウェアの作り方だけに留まらず、新しい仕事の進め方としてアジャイルがあるのですね。

懸田
上手に言いますね。
ただ、便宜上アジャイルという言葉を使っていますが、ここまでいくとお客様にはアジャイルという言葉は必要ありません。
「チームとして上手くできていないよね」というお客様に対しては「こういうふうにするといい」とお話ができますし、新製品にぼんやりしたコンセプトしか思い浮かばないというお客様に対しては、明確にするために何が必要かのアドバイスができるかと思います。
結局は、自分にできることの中でお手伝いをすることによって、松山や愛媛の企業さんに「ビジネスが良くなったね」とおっしゃって頂けることが、本当に私が求めるものなのです。

大河原
有難うございます。
ビジョンという言葉が出ましたが、会社のビジョンに「次世代につながる、いきいきとした世界を作る」とありましたね。
懸田代表の考えられる「いきいきとした世界」とはどのような世界なのでしょうか。

懸田
いきいきというのは、人によって違うと思うのですが、自分が仕事や趣味などをすることによって、楽しいと感じたり、誰かの役に立っていると実感できること、あるいは日々幸せをじることではないかと思います。
私が次世代と言っているのは、そこに「自然との調和」が不可欠だと思っているからです。
愛媛は周りに山もあるし川もあるし海もあるし、私からしてみればなんでもあるという感覚なのでが、松山の方はそれが当たり前すぎて別に凄いとも思わないじゃないですか。
でもその大切さは、無くなってから気づきます。
なので、自然の中の人間だという意味を含めたくて、調和と言ったのです。

大河原
無くなってから気づくということは、まだあるうちからその大切さに気付いて頂かないといけませんね。

懸田
そうですね。
私は県外から来ているので、皆さんが当たり前だと思っていることが「実は当り前じゃないんだ」と言える立場だと思っています。
まちづくりにも通じるのですが、無い物ねだりになるのではなく、今当たり前のものに実は価値があるということに気付いてもらって、それをいかに守っていくか、もっと良くしていくかが大事だと思います。

大河原
確かに、今ある物の価値って身近にありすぎると中々解らないですね。

懸田
そうですね。
例えばある季節になるとミカンの花の匂いがしてきます。
普通に暮らしていると気づかないのですけど、遠出から戻って来た時に匂いを感じて「いいな」と思うこともありますし。
それから車で30分のところで天然のホタルが見れるというのも東京ではなかなかないことですよ。

大河原
そういうことに気づくためには、地方の人は逆に都会に出てみることも必要ではないかと思います。
故郷を離れてみて初めて気付くこともあると思うので。

懸田
それは確かにあると思います。
私の知り合いにも東京に行ってまた地元に戻った人が結構いますから。
行ったからこそ、その良さに気づくということはあるのでしょうね。

大河原
私自身も熊本から松山に移って、インドネシアにも行ったことがあります。

懸田
大河原さんがインドネシアに行って気付いた日本の良さとはなんでしょうか。

大河原
色々ありますが、なんといっても水ですね。
日本だとレストラン等で氷水を出されても普通に飲めますが、発展途上国で出される氷水だと、水はミネラルウォーターを使っていても、店によっては氷が水道水をそのまま凍らせて入れているところがあるので、それが溶けると水道水の中の雑菌も一緒に溶けて、腹を下すということがあるので、常にきれいな水道水が飲めるのはいいことだと実感しました。
他にも、ちょっと田舎に行くとインターネットが使えなかったり、使えても速度が遅かったりしました。

懸田
私の知り合いもこの前フィリピンに言ったら電波が入らないと言って困ってました(笑)

大河原
逆に日本にはない現地の良さもありますね。

懸田
日本にない良さってどのようなことですか。

大河原
これもネット絡みなのですが、ネットカフェが気軽に使えたことです。
日本だと利用するのに身分証明の提出をしなければいけませんが、向こうでは料金さえ払えば手軽に使えます。

懸田
安いんですか。

大河原
安かったですね。
私が行った時は、確か1時間およそ30円から50円位だったと思います。
そのかわり設備やサービスは簡素ですし、セキュリティもどうなっているのかとは思いましたが、それでも気軽に使えたのはよかったと思います。

懸田
なるほど。
そういうシステムが日本にあってもいいですよね。
そのように、当たり前だと思っていたことが実は当たり前ではないとか、もっといいものがあることに気づくためには、外に目を向けることがやはり大事だと思います。
よく、Think global, act localという言葉が言われますね。
グローバルな視点で色々なことを見聞きして考え、自分の今大事にしたい場所で行動する事が大事ではないでしょうか。

大河原
グローバルに学んだことから取捨選択して、ローカルに落としこむことで、より現実的な行動が取れますね。

懸田
そうですね。
一番やってはいけないのは「他でこれがいいから、ここでもそのまま真似しようよ」ということなのです。
そのまま持ってきても上手く嵌められないので、いいものを知りつつ、今その場の状況を考えて、どうやったらいいんだろうと考えていかなければいけません。
私の好きな民俗学者で宮本常一という方がいらっしゃいまして、日本を歩きまわって研究をされたのですが、その方いわく、昔は「ショケンシ」という人がいたそうです。
漢字で書くと「世間師」と書きます。
「ショケンシ」は村の外に出て、色々なものを見たり聞いたりして、それを自分の村に伝えたりする人なのだそうです。
私はそういった役割として、自分は振る舞っていきたいと常日頃から思っています。

大河原
「ショケンシ」、昔はそのような人がいたのですね。
私も興味がわきました。

懸田
そうでしょう。
宮本常一さんはぜひ読んで下さい。
面白いですよ。

大河原
ちょっと本を探してみようと思います。
会社としては、今後はアジャイルを介して、松山の企業様により柔軟に環境に適応できる仕事の進め方を広めていきたいのでしょうか。

懸田
はい。
そういうのを求めている会社さんのお手伝いをしていきたいと思います。
実は私は最近色々と顔を出していて、EVNという、愛媛の起業・創業を応援する組織の会員にもなったり、それから大手町のコワーキングスペースでS-CROWDという起業家コミュニティもしています。
このカルチャーワークスという会社も、社会の変化に柔軟に対応できて、チームとして上手く行動して、皆が活き活きとしながら仕事ができ、成果を出すというやり方を伝えるというのがあり、それとはまた別に、新しいビジネスを立ち上げるというのも平行してやっていこうかと思っています。

大河原
次々と新しいことに取り組んでいきたいのですね。

懸田
まずは自分でいかに生活していくかというところがありますが(笑)
独身だったらいくらでも出来ますが、家族がいると無視できないので。

大河原
そうですね。
最後に若者にメッセージをお願い致します。

懸田
アジャイルでよく言われることに、「Fail fast」という言葉があります。
「早く失敗しろ」という意味なのですが、致命的になるよりも早く失敗しておけば、自分に足りないことが色々と学べるのです。
「失敗したら嫌だ」という気持ちも解りますし、綿密に考えて成功するように取り組むのも大事ですが、Fail fastで早く失敗して、学んだ回数を増やしていってほしいと思います。
可能性はいくらでもあります。
私も40歳を過ぎてもまだ色々頑張れますので。

大河原
有難うございます。

インタビュアーより

bord-cultureworks

懸田代表は話の引き出しが非常に多く、ここには書ききれないほどに多くの話題について語ってくださいました。
その話題の中には、アジャイルやパーマカルチャーという概念を始めとして、今まで私が全く知らなかったことが沢山あり、改めて自分はまだまだ見識が狭いことに気付かされました。
考えてみれば、社会の変化や不測の事態に柔軟に対応するためには、日頃から情報を収集し、自分の中で噛み砕く作業が必要になってくるのでしょう。
懸田代表のこのような話題の多さも、新しくていいものについて肯定的に捉える姿勢と、これまで様々な方向にアンテナを広げてきたことの賜物なのだと思います。
懸田代表、本当に有難うございました。
大河原慧

next

次回インタビューは、株式会社ウィットプラン 室節 季男 代表取締役にお伺させていただきます。

会社概要

社名:ゼンソー(旧:合同会社カルチャーワークス)
代表:懸田 剛
住所:愛媛県松山市越智3-6-20
URL:http://zensow.jp
事業内容:・ソフトウェア開発 ・プロダクト開発 ・チームファシリテーション・組織改善のトレーニング、コンサルティング

サービス紹介

eigyou

『アジャイル開発』
世界中のIT企業が採用し成果を挙げているアジャイル開発は、ビジネスの変化に適応しながら成果を出し続ける考え方と具体的な実践です。
独学では難しいアジャイル・スクラムの導入を、御社の状況を踏まえながら段階的に身につくようにトレーニング・支援します。

詳しくは、こちら

eigyou

『サービス紹介』
新規プロダクト、新規サービスがうまくいかない御社のために、プロダクトのコンセプト作りから、MVP(最小限の実用製品)の構築、仮説検証プロセスを踏まえた、プロダクト・マーケット・フィット(PMF)を目指す一連のプロセスをトレーニング・支援します。

詳しくは、こちら

eigyou

『サービス紹介』
「どうもチームが効果的に動けていない」とお悩みのあなたのために、「見える化」「共有」「助け合い」「ふりかえり」の4ステップでチームが自律・改善チームに生まれ変わるチームファシリテーションをトレーニング・支援します。

詳しくは、こちら

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