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「一度は会社員として働く経験も必要」
ライティングオフィスMISTELTEIN
尾関 恵一 代表
- 2014/11/13
大河原
インタビューを始めさせて頂きます。
まず、尾関代表は学校を卒業してからどのようなお仕事をされていたのでしょうか。
尾関
私は理系学部の出身で、卒業後は愛媛県内の化学系のメーカーに技術職で就職をしました。
ですから、元々宣伝や広告といった現在の仕事とは分野が違っています。
大河原
そうだったのですか。
そこからどのようにして現在のコピーライティングの道に進まれたのでしょうか。
尾関
一つには、大学時代にコーヒー豆の販売店のアルバイトをしていたのですが、アルバイト先のお店の経営が厳しくなった時があり、集客のためにチラシ配りをしたところ、お店にお客様が沢山いらっしゃったことがあります。
大河原
その時に、広告の凄さを実感されたのですね。
尾関
そうですね、チラシ一枚でこれだけ変わるんだなと思いました。
ただ当時は仕事にしようとまでは全然思わず、凄いなと思っただけでした。
大河原
なるほど。
技術系の職種で就職をして、改めて広告に興味を持たれたきっかけは何でしょうか。
尾関
実は、入社して3ヶ月ぐらいで、技術職は自分には向かない仕事だと感じました。
だからといって、1年経たずにいきなり辞めてもしょうがないので、まずは数年間、働きながら、引き続き会社に残るか転職するかを見極め、転職するなら何かスキルを身につけようと考えました。
その時に大学時代のアルバイトのことを思い出し、広告を作って集客することが面白そうだと思っていたところ、タイミングよく大阪にあるマーケティングの会社のことを知って、仕事の傍ら大阪にトレーニングを受けに行ったりしていました。
大河原
大阪でのトレーニングとは、どういったことをしていたのでしょうか。
尾関
広告の書き方やその前段階の調査、すなわちどんなターゲットにどんな商品を売っているのか、マーケティング等のやり方も習っていました。
愛媛では広告のことを勉強できる環境がなく、聞くところによると、日本中でも同様のことをしているところは殆どなかったそうです。
セミナーのたびに愛媛と大阪を往復するのはお金もかかりますし大変ですが、良い勉強をさせて頂いたと思っています。
大河原
そこまでして勉強をするほど、広告への興味が強かったのですね。
大阪のセミナーに通い続ける中で、会社を辞めて独立に踏み切った理由は何だったのでしょうか。
尾関
きっかけらしいきっかけではないのですが、人生で最も長い期間一つの組織に属した経験を振り返ってみると、小学校と中高一貫校でそれぞれ過ごした6年間が最長だったので、これを一つの区切りとして、会社も6年たったら辞めようと考えていて、去年退職しました。
ただ、その前から、趣味の延長とスキル磨きを兼ねて、他の知り合いのチラシ制作を無料で手伝ったりはしていました。
大河原
十分に準備をして独立されたのですね。
とはいえ、独立したばかりだとまだまだ大変なことや困っていることもあると思います。
尾関
はい。
コピーライター自体の知名度が愛媛では低いと感じています。
例えば名刺を交換する際に、「コピーライターです」と言っても通じないことがよくあります。
そこで仕事について説明をするのですが、まだまだ認知されていないと感じますね。
大河原
確かに認知をさせていくのは大変ですが、逆に言えば未開拓な市場ということで、売り込み甲斐があるのかなと思います。
営業活動についてはどのようにしていらっしゃるのでしょうか。
尾関
営業そのものは、私自身が人と会って「うちで広告を作りませんか」というお願いをするやり方ではなく、マーケティングで仕事を取っています。
例えばインターネット上に自分の会社の広告を出して、お問い合わせを頂いたお客様と仕事をさせて頂いたりしています。
大河原
なるほど。インターネットでの広告については私も興味があります。
差し支えなければどういった形で出しているのかお教え下さい。
尾関
インターネットでは、Googleで「集客」「愛媛」とか「売上」「上げる方法」といったキーワードで検索した時に、検索結果ページの一番上の広告スペースに出しています。
そこをクリックして頂いたら私のホームページに飛びますので、「こんな悩みはありませんか」「放っておくとこうなりますね」「それはまずいですね」「解決策の一つとして、こういうものがありますよ」という流れの文章を書いておいて、最終的に、広告をする場合はこれが価格です。
もし満足行かなかったら代金をお返しします、というモデルにしています。
大河原
予め網を張って、集客について悩みがある方から手を上げて下さる形にしているのですね。
そういったところでお客様とそれ以外の方を区別できるのは結構効率的だと思います。
広告を作る段階になり、お客様とのやり取りの中で、気をつけていることは何でしょうか。
尾関
その会社やお店の商品やサービスを、実際に購入される方の情報を事細かく聞いていきます。
年齢、世帯年収、家族構成、子供の年齢や通っている学校、世帯主様の職業、一日の過ごし方、他にも色々とお聞きします。
大河原
そんなに詳しく聞くのですか。
尾関
はい。
多くの購入者の方について情報を集めておき、共通点を抽出することでお店に来て欲しいターゲットの人物像が1つ作れます。
例えば20代の女性で松山市内に一人暮らし、仕事は9時5時週5勤、年収は2~300万円程度、旅行好きで最近残業が続いている、この位具体的な人物像が作れれば、そのような人たちに向けてどのような広告の文章を書けばいいのかが見えてきます。
それが仮に20代の女性という情報だけだと、漠然とし過ぎていて何を書いていいのか判らなくなってしまいますよね。
大河原
なるほど。
広告を見た方が、モデルになった人物像を自分のことのように感じれば、そのまま読み続けて頂けるのですね。
しかしそこで絞りきってしまうと、今度は、本当はその商品やサービスが欲しいのに、人物像に当てはまらなかったばっかりに、購入の機会を逃してしまうお客さまもいらっしゃったりするのではないでしょうか。
尾関
当然いらっしゃいます。
その時は、その方に合わせまた作り直していきます。
大河原
いくつも人物像を作っていって、より多くの方にアピールすることができれば、人々の目に止まって商品が買われる確率もそれだけ高くなりますね。
そのような人物像を作るにあたっては、尾関代表の主観や思い込みを入れないようにすることが重要になると思います。
尾関
おっしゃったように、自分で「こんな人がお客様なんだろうな」とは絶対に考えないようにしています。
基本的に私が直接、あるいはお店や会社の方に協力をして頂いて、実際のお客さまにお話を聞くようにしています。
それによってより実態に則した情報が集められるのです。
大河原
とてもためになるお話を有難うございます。
そういったお仕事をしていらっしゃる中で、一番のやりがいを感じられることは何でしょうか。
尾関
やはり、私が作った広告の反応率が高く、お客様にご来店して頂いた時は嬉しいですね。
大河原
広告の効果はどのようにして分かるのでしょうか。
尾関
広告を作る際に、チラシを持参したりページを見せたら割引するなど、何かしらのアクションを取って下さるような目印をつけるようにしています。
結局、どんな広告でも、反応率が見えなければ、その次どうやって改善していけばいいのか解らなくなりますので、効果が計測できない広告は作らないようにしています。
大河原
そこで具体的な数字として分かることによって、次に繋げることが出来るということですね。
今までのお話はどちらかと言うとマーケティングのことでしたが、コピーライティングについてもお話をお聞かせ頂きたいと思います。
一般にコピーライターという職業は、より集客・宣伝効果の高いキャッチコピーを書くお仕事というイメージがあるかと思いますが、実際はキャッチコピーだけでなく商品説明の文章なども書くのですね。
尾関
もちろんキャッチコピーは広告の中で重要な要素なのですが、まず購読者の目を引いて、その後の商品説明も含めた、時にはA4換算で7~8枚にもなるようなセールスレターを書くのがメインの仕事になります。
コピーライターというと、糸井重里さんのように格好いいコピーを書かれる方もおりますが、私は格好いいフレーズを考えるのではなく、最終的にお客様に商品を買って頂くための文章を書くことが仕事です。
例えばインターネットの商品説明ページで、「あなたはこんな経験をしたことがないでしょうか」という風に問いかけていって、最後に申し込みフォームを設けるようなページを作るのが仕事になるのです。
大河原
有難うございます。
私もインタビュー記事を書くときに結構長い文章を書くのですが、自分で一から文章を書き上げるのはまた違った大変さがあると思います。
尾関
大事なことは、いかに商品が売れる文章を書くかです。
極端なことを言えば、紙のチラシでもインターネットでも、売れる「型」は決まっているので、それに則って書きさえすれば、誰でも反応率は上げられるでしょう。
そこで、先に話したマーケティングの部分にもなりますが、より効果の高い広告を作るためには、何よりもお客様のことをより沢山知ることが重要になるのです。
大河原
マーケティングの成果を反映させることによって、その会社・お店にとって効果的な文章が書けるのですね。
尾関
クライアントの会社・お店様に合わせた文章というよりは、来て頂きたい購買者の方に合わせた文章ということです。
それをどれだけ作れるか。
例えば、健康食品を売っている会社のライバルは、同じく健康食品を扱う他社だけではなく、別のダイエットグッズやフィットネスクラブ、有機栽培野菜など、ジャンルは違っても最終的に「健康」につながる全部の物がライバルになります。
その中で「この会社の商品を買った方がいい」とお客様に思って頂くにはどうすればいいかということです。
確かに、健康について悩みや不安を抱えていらっしゃる方に向けて、「今までサプリを飲んだけど上手く行かなかった経験はありませんか」「健康グッズを試したけど駄目でしたよね、分かります」「でも、当社はそうじゃないんですよ」という風に、誰でも型通りに文章を組み立てることは出来ます。
ただ、具体的な部分が、どれだけお客様を調べたかによって決まってくると思います。
大河原
有難うございます。
そういうところで事前の聞き取りでイメージをしっかり組み立てておくと、より多くの人に訴えかける文章が書けるのですね。私も見習うべき点が多いと思います。
屋号のMistelteinは、調べたら北欧の言葉で「ヤドリギ」という言葉だそうですが、この名前にした理由は何でしょうか。
尾関
ヤドリギって面白いですよ。
他の植物のように自分で直接地に根を張るのではなく、木から木へと移って生き残っていく、不思議な植物なのです。
私自身も特に決まった拠点を持っているわけではなくて、クライアントとなるお店や会社に出向いて、そこで売上げに協力するというところから採っています。
大河原
なるほど。
しかしヤドリギは宿主の木から栄養分を吸い取って寄生しているわけですから、尾関代表のように、お店や会社に利益をもたらすお仕事とは正反対の気もします。
尾関
確かに、仕事に失敗すればそういう面もあるので、戒めも込めてその名前にしているのです。
大河原
宿主であるお客さまから養分を吸い取ったりしないようにという意味も込めているのですね。
凄く奥深いです。
その他、尾関代表の人生の中で、視野が広がったと考えられていることはございますか。
尾関
全然仕事とは関係ないのですが、働き出してから、仕事をする傍ら一人で旅行に行くようになりました。
中でも、中学生の頃にオーストラリアのパースでホームステイをしたことがあり、その時お世話になった家庭を訪ねて、今から2年ぐらい前、10年振りに1人でパースに行きました。
なにしろ完全に1人だったので、チケットや現地での連絡先から全て自分でやらないといけないのが大変でした。
大河原
一人での海外旅行はチケットの手配など、本当に大変ですね。
トラブルもあったのではないでしょうか。
尾関
10年振りパースの空港に降りた時に、まず携帯電話が通じないことに気付きました。
それからクレジットカードが現地のATMに対応していなかったりして、所持金も5,000円くらいしかなく、「このままだと空港から出られないぞ」と思ったことはあります。
ですが最終的に、ホームステイでお世話になった方が迎えに来てくださったので、特にそこで何かがあったわけではないのですが、「なんとかなるな」ということをその時学んだ気がします。
大河原
トラブルがあってもなんとかなるから、落ち着いて対処しようという気持ちが培われたのですね。
それにしても10年も行ってないと、かなり様変わりしていたのではないでしょうか。
尾関
やはりだいぶ変わっていますね。
今の日本は昔ほど景気が良くないですが、2度目にパースに行った時はものすごく景気が良くて、そのギャップに驚きました。
お世話になった家でも、「スマートフォンの新製品が出たから、じゃあ買っちゃおう」ということで、高価な物を気軽に買っていましたし、街中を歩いても全体的に活気に溢れていることが感じられました。
大河原
消費活動がかなり盛んになっているのですね。
尾関
そうですね、特に、中古住宅が値上がりしても、飛ぶように売れているということが驚きました。
今の日本だと考えられない世界が広がっています。
オーストラリアの他にも上海や香港に行きましたが、国が変われば事情も変わることが判りますし、我々を含め今の日本人ってずっと不景気の中にいるので、一度は好景気の国を体験してみたらいいと思います。
大河原
私も学生時代にインドネシアに行ったことがありますが、成長中の国に行くと、そこに住む人の活気を自分でも感じるし、元気を分けてもらえる事がわかりますね。
尾関
そうでしょう。
今は忙しいのでしていないのですが、落ち着いたら、またどこかに行こうかなと思っています。
大河原
なるほど。
独立したばかりですから、今は早く事業を軌道に乗せることが大事ですね。
将来のビジョンについてはどのように考えていらっしゃるのでしょうか。
尾関
規模を大きくしようとは考えていません。
セールスレターの執筆の他に、事前準備として、お客様に直接お聞きしたり商品を調べたりもするので、私一人では一月に2~3件が限度なのです。
お手伝いしてくれる人を増やすにしても、お店のことはお店の方が、広告のことは私が一番解っているので、私かお店の方がお客様の声を聞かないと、訴求力のある広告を作る上で重要な、お客様の生の情報が手に入らないと思います。
大河原
生の情報、ですか。
尾関
はい。
文字や言葉に出てきたことだけではなく、その奥にある隠れた悩みなど、お客様に直接取材してみないとわからないことが結構あります。
私もアンケートを取ることがあるのですが、たとえ匿名でも恥ずかしかったり面倒くさかったりするので、本音を書いてくれるケースって少ないのですよ。
でも実際に話しをしていけば、「この人は実はこんなことを考えているのだな」というのがすぐわかります。
大河原
なるほど。
それでは今私と話している瞬間でも、私の悩みとかが分かったりもするのでしょうか。
尾関
なんとなく、「こういうことを考えているのだな」と見えてきたりはしますね。
大河原
観察力が養われそうですね。
尾関
そうですね。
普段は私のほうが取材する側なので、こうやって言葉で喋ることが少ないです。
大河原
私が尾関代表を取材させて頂くことで、尾関代表にとっては取材される経営者の方などのお気持ちが分かるのかなとも思います。
尾関
結構ドキドキしますね。
次どんなことを聞かれるのかなとか、この後どうなるのだろうとか考えます(笑)
大河原
なるほど。
そうおっしゃって頂けると、私も今後に活かせるかと思います。
ウェブや紙以外で注目している新しい広告ツールはあるのでしょうか。
尾関
私が今面白いと思っているのは、LINEですね。
大河原
LINEについては、ネットバーストの永野代表からもお聞きしたのですが、LINE@というサービスなどがとても可能性があるとか。
尾関
そうですね。
私も、実際にLINE上で自由記述式のアンケートを取ったことがあるのですよ。
一般に自由記述式は選択肢式と比べて煩わしいものですが、非常に大きい反応がありました。
ダイレクトメールやメールマガジンの回答率が1%あればいい方だという中で、300~400人に送って回答者が70名近くという、20%近くの回答率があったのです。
大河原
それは本当にすごいですね。
ダイレクトメールを配るよりも遥かに安くてそれだけ成果が上がるということは、これからツールとして使える可能性は十分にありそうです。
尾関
もっとも、物珍しさだけで回答して下さったという可能性はありますが、今ある広告の手段の中では、一番いいメディアであると認識しています。
ただ、ツールが変化しても、メッセージを受け取ったお客様に「これはいいな」と思って頂き、何かしらの行動をして頂くという基本の部分は変わらないと思いますし、これからもその基本を大事にして「売れていないけど実はいいものだ」という商品やサービスについて、広告を作っていきたいと考えています。
大河原
本当は素晴らしいのに世の中に埋もれているものを、一つでも多く掘り起こしていく、ということですね。有難うございます。
最後に、これから社会に出ていこうとしている大学生などの若者へのメッセージを頂きたいと思います。
尾関
より具体的には、将来何をしたい若者を想定していますか?(笑)
大河原
それは様々なのですが、特に経営者になりたい方に、人生の先輩からのアドバイスということでお願いいたします。
尾関
なるほど。
別に焦って起業をしなくてもいいと思いますよ。
もちろん経営者になりたいという気持ちを持ったり、そのための努力をしてもいいとは思いますが、一度は会社員として働く経験をして、社会人としてのマナーを学んだりお金を貯めて欲しいと思います。
200万か300万円ぐらいの貯金をしておけば、1年ぐらい収入がなくても、なんとか食べていくことは出来ますので、起業した後で資金がない人脈がないと苦しむのではなく、もし何かあっても大丈夫な状態を作ってから起業に踏み切ってもいいと思います。
大河原
そこで得たお金や人脈が、苦しい時の助けになったりしますね。
以上でインタビューを終わらせて頂きます。
本日は貴重なお話を有難うございました。
インタビュアーより
乞うご期待!
会社概要
社名:ライティングオフィスMISTELTEIN
代表:尾関 恵一
住所:愛媛県松山市泉町14-12 La rencontre 泉町 505
事業内容:・広告/メディア