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「自分に余裕がないと、人に優しくなんてできない」
studio paume
大森 絵美 代表
- 2015/3/30
産後ケアへの取組み方
大河原
お話を聞くと、確かにこれからの日本ではもっと産後の母親を助けて、子育てを支援していく体制が必要だと感じます。
大森
そうですね。
例えば、フランスの場合は産前産後のリハビリは公費で賄われています。
母親が負担をほとんどせずに産前産後のケアが受けられるだけでなく、産後の母親が心や体が回復しきれなかった場合、そこからまた専門科に振り分けられます。
そこまできちんとしてくれるので、あまりに酷い事態は起きにくいのです。
日本はそのあたりがまだ不十分なので、母親が悩みを抱えてしまって産後の虐待や自殺に繋がってしまい、そうでなくても仕事を辞めてしまう母親も多いので、このような問題を何とかできないかなと考えたのがきっかけです。
大河原
東京など他の地域で、同じような志を持って、産後の母親の問題解決に取り組んでいらっしゃる方もいらっしゃるかと思いますが、そういう取り組みは、愛媛ではまだまだ珍しいことのように思います。
大森
大都市に行けば様々なサービスが選べる状態にあって、産後ケアをお仕事にされている方も沢山いらっしゃいます。
しかし、愛媛だけでなく四国全体を見てもまだまだ普及しているとは言えません。
私自身も、年末に理学療法士として勤めた病院を退職して、ようやく本格的に産後ケアの普及・啓蒙活動を始めたばかりです。
産後ケアはすごく大事なことなので、経営者の考え、想いとして産後ケアを記事に取り上げて頂いて有難いです。
今は少しでも知名度を上げていくことから進めています。
大河原
なるほど。
この企画も、色々な経営者の方にお話を聞いて、色々なお仕事、社会があるという事を若者に伝えていく役目もあるので、是非協力させて頂きたいと思います。
それにしても、10年間続けた仕事を辞めてまで産後ケアの普及に注力というと、ご家族や元の職場などからの反応はどのようなものだったのでしょうか。
大森
理学療法士はそれなりに安定した仕事ではありましたし、一旦辞めることで確かに収入も大きく減りました。
それに加えて、私の場合は子供が小さくてお金がかかる時期でもあったので、私自身も結構悩みましたし、表立って止める方はいませんでしたが、心配はされました。
一番身近にいる主人には、やはり一緒に育児に関わっていたり、私の産後の姿を生で見ているからそういうことの必要性をすごく感じてくれていましたし、主人もまた理学療法士で、病院に常勤で勤務している限りは副業ができない事も知っているので、私が事業を起こしたことに関しては反対どころか応援をしてくれています。
大河原
そうだったのですか。
そのようなご主人の助けもあって、今年の3月に独立開業されたばかりということですが、独立以前の理学療法士をしていた頃と今この時点とでは、産後ケアへの取組み方について、どのような変化があったのでしょうか。
大森
そもそも、法律によって理学療法士や作業療法士は医師の指示がないところでは一切治療行為が出来ません。
ということは、病院ではリハビリを通じて患者さんの身体に直接触って治療をしてきたのですが、独立してしまった今はそれが出来ないから、働き方を全く変えざるを得ないのです。
そこで、これまで私が学んできた知識と新しく勉強したことを活かして、「治療」はしないけど「予防のための指導」する事を始めました。
病院では、もう病気になってしまった人や怪我をしてしまった人、患者さんを相手にしていましたが、今は健康な方の産後の心身のトラブルに対する予防に関わっているので、実は活動していることも、これまで関わってきた人達とも違います。
ただ、専門学校生の頃からずっと培ってきた知識がとても役に立っていて、人体の仕組みをしっかり理解して、体の異常を放っているとどうなるかという予後予測がこの10年間の理学療法士としての経験でしっかりできているからこそ、今の仕事ができると思っています。
大河原
法律の成約があるのは残念ですが、患者さんに治療をするのと、患者さんでない方に、患者にならないように指導をするのとでは、同じくらい大切なことだと思います。
大森
そうですね。
ですが予防に関わるということは、「必要だと思っていない人」に必要性を伝えるところから始まります。
出産するまでは誰もが元気に妊娠して元気に産めて当たり前だと思っていますが、「子供を産んだ後にあんなことになる可能性があると誰か教えてくれればよかったのに」と強く思う母親が多くいらっしゃいます。
私自身もそうでした。
まして現代の日本人は、昔と違って体型も生活様式も全く変わっているので、妊娠や出産はむしろかなりハードルが上がっています。
大河原
そうなのですか。
大森
はい、なので今の若い女性の方には妊娠や出産に掛かるリスクを伝えていき、ライフプランニングをもっと早いうちからしっかり考えてほしいと感じています。
言葉は悪いかもしれませんが、やはり出産には適齢期があり、高齢になるほど障害児の発生率が上がってきます。
ダウン症の子供の誕生率も、20代と40代とでは10倍以上違うというデータもあります。
女性が社会で活躍している中で、やっと仕事が面白くなってきたり、責任ある立場に立つようになった時期に妊娠・出産・育児で仕事を離れるのは抵抗がありますが、年齢が上がれば上がるほど妊娠・出産しにくいことであったり、子供だけでなく母親の心身への負担も大きいことを考えると、早いうちからそれらと向き合っていくことを若い女性たちにはしてほしいのです。
そして、妊娠出来た方には、産後にどうなってしまうかというのを、しっかりとロールモデルを使って提示していくことで、最良の形で産後を迎えられるお手伝いができればという風に思っています。
産後のトラブルの話をしたら、びっくりされる母親がとても多くいらっしゃいますが、誰も表だって口に出さないだけで、苦しんでいる人は多いのですよ。
大河原
そのようにデリケートなことを話すに当たって、伝え方などで気を付けていることはございますか。
大森
現在はインターネットやSNSがとても普及していて、自分が欲しい情報を簡単に得られやすい反面、間違った情報もとても多く、また選び間違えると理想が変な方向に行ってしまう恐れもあります。
口当たりのいいことばかりを書いているページやブログなどを見ても、自分がその人と同じようにできるとは限らないし、かといって悪いことばかり書いている記事を見て、自分も同じことになるのだろうかと怯える必要もないのです。
自分らしい産前産後の過ごし方を探しつつ、かつおさえるべきところをしっかりと伝えることに努めていますが、それはとても難しくて、価値観が多様化し情報が氾濫している中では若い女性は特に惑わされやすいと実感しています。
更に、出産を控えた女性は非常に情緒不安定になっているので、指導する私の言動一つ一つにも本当に気を付けないと、それが元で落ち込んでしまったり鬱になったりすることもあります。
大河原
言葉遣いにまで注意深くしなければならないのですね。
大森
はい、何となく出た一言でも、相手の気持ち一つで全然違う解釈をされてしまうのは日常的にあることですし、特に産後の母親は結構自分の殻に入りがちで、旦那さんが良かれと思って掛けた言葉で被害妄想にかかってしまうことも、家庭ではよくありがちです。
会社概要
社名:studio paume
代表名:大森 絵美
住所:伊予郡砥部町拾町7-4 2F ホンぷりCafe内
TEL:080-5669-3566
URL:http://studio-paume.com
事業内容:・生活関連業/娯楽業